TOPICS

  • 自分の好きな作品を紹介し、おすすめの演奏を挙げる時、ルドルフ・ケンペの名前を出していることが少なくない。若い頃は極度の激しさ、奈落の底の暗さ、えぐるような鋭さを求めがちで、過剰な表現に走らないケンペに惹かれることは稀だったが、心身を満たす充実感を味わいたいという気持ちが強くなっている今、何度も聴きたくなる演奏となると、この人の録音に食指が動くのだ。

    [続きを読む](2019.07.04)
  • “Follow the yellow brick road!”――映画『オズの魔法使』(1939年公開)の中でジュディ・ガーランド演じるドロシーは、そう叫ぶマンチキンたちに急き立てられて、オズの都エメラルド・シティへと続く黄色いレンガ路を進む。魔法使いの力を借りて家に帰るために。でもやっと辿り着いてみると、実は魔法使いに特別なパワーはなく、

    [続きを読む](2019.06.24)
  • ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール主演の『ヘッドライト』(1956年)は、初老のトラック運転手と若いウェイトレスの悲恋物語で、溢れる詩情と哀感が胸を打つ傑作だ。アルヌールのファンには、ただでさえ魅力的な彼女のことをたまらなく愛おしく見せる作品として記憶されている。涙や溜息でじめじめしそうな題材だが、過剰な表現をせず、変にベタつかせず、テンポよく見せ...

    [続きを読む](2019.07.13)
  • 室生犀星の晩年に連載・刊行された『かげろうの日記遺文』は、それまでに40作以上書かれた「王朝もの」の掉尾を飾る傑作である。1959年に野間文芸賞を受賞した時、銓衡委員の一人、亀井勝一郎は次のように評した。「女びとなるものへの、これほど夢ふかい作品を私は知らない。ちょっと読みにくい文章だが、それが何か薄明のやうな光りを放って、時に執念は凄く、また陰翳のふかい性...

    [続きを読む](2019.06.14)