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  • ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、モノラルとステレオの2種類ある。前者は1950年から1954年、後者は1959年から1969年にかけて録音された(「ハンマークラヴィーア・ソナタ」は除く)。演奏に関しては、モノラル盤の方が構築的である。ピアニッシモの美しい音色や聴き手に違和感を与えないアゴーギクの妙技も、神経質すぎない程度に磨かれている。ただし、

    [続きを読む](2017.03.13)
  • 高校生の頃、エアチェックしていたラジオの番組で初めて「アル・ディ・ラ」を聴いた。曲をかける前に、DJはベティー・クルティスのことを「歌がうまい」という風に紹介していた。それでも、当時私はカンツォーネをよく聴いていたので、ちょっとくらい歌がうまくてもそう簡単に心を動かされることはないとタカをくくっていたのだが、豈図らんや、その美声、技巧、声量を前にして、眩い光...

    [続きを読む](2017.03.04)
  • 先にも述べたように、編集は極めて巧妙だ。中には、おとみがラーメンに胡椒をかけて大きなくしゃみをし、幸子がずるずる音を立ててラーメンを食べるカット→おきん宅の外観のカット→おとみの前でおきんが上品にご飯を食べるカットという風に繋げるなど、やりすぎのように見える箇所もあるが、綿密に計算された編集美学に貫かれていることは間違いない。人物の動作にも意味が込められてい...

    [続きを読む](2017.03.20)
  • 苦悶その物が生命である。これは岩野泡鳴が1906年に発表した評論『神秘的半獣主義』の中に出てくる言葉だ。泡鳴に言わせると、苦悶とは解決できるものではなく、これを解決しようとするのは、悲劇を喜劇に堕落させることであり、「無終無決の苦悶を活現してこそ、初めて真の悲劇」となるのだった。泡鳴はその主義を血肉とする小説を書いた。悲劇といっても、彼のそれはお涙頂戴ものと...

    [続きを読む](2017.02.25)