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  • ブルックナーの交響曲第5番は、緻密に構成された大曲で、骨組みは複雑ながらもがっちりとしている。第7番や第8番などに比べると硬質な感触があるが、その重たい鉄の扉を開けた向こう側に、我々を圧倒する音の世界が広がっている。傑作と評されながらも、とっつきにくいと言われることがあるのは、その扉を開けるのに少し時間がかかるからだ。各楽章の主題の扱いは細かく計算され、旋律...

    [続きを読む](2019.06.04)
  • ジェフ・バックリィの「ハレルヤ」、パティ・スミスの「ビコーズ・ザ・ナイト」、ザ・クラッシュの「アイ・フォウト・ザ・ロウ」、シネイド・オコナーの「ナッシング・コンペアーズ・トゥ・ユー」……。以上の曲はいずれも、ともするとオリジナルよりも有名なカヴァー・ヴァージョンだ。何も原曲より優れているという意味ではなく、ジェフやシネイドは単に、大好きな曲に独自の解釈を加え...

    [続きを読む](2019.05.26)
  • 猫のような雰囲気を持つ女優というと、フランソワーズ・アルヌールやブリジット・バルドー、あるいはもっと後年のナスターシャ・キンスキーあたりが思い浮かぶ。彼女たちに共通しているのは、男を虜にする性的魅力の持ち主であることだろう。この系譜の元祖が誰になるのかは分からないが、1930年代に登場した一人の女優を避けてさかのぼることはできない。彼女の名前はシモーヌ・シモ...

    [続きを読む](2019.05.21)
  • 室生犀星の晩年に連載・刊行された『かげろうの日記遺文』は、それまでに40作以上書かれた「王朝もの」の掉尾を飾る傑作である。1959年に野間文芸賞を受賞した時、銓衡委員の一人、亀井勝一郎は次のように評した。「女びとなるものへの、これほど夢ふかい作品を私は知らない。ちょっと読みにくい文章だが、それが何か薄明のやうな光りを放って、時に執念は凄く、また陰翳のふかい性...

    [続きを読む](2019.06.14)