
マイケル・レビン 〜正当な評価のために〜
2012.03.03

1936年5月2日、マイケル・レビンはニューヨークに生まれた。父親はヴァイオリニスト、母親はピアニストである。最初は母親からピアノの手ほどきを受け、その後、ヴァイオリンにシフト。7歳の時から名教師イヴァン・ガラミアンのもとで学び、師をして「弱点が何ひとつ見当たらない」といわしめる。14歳でカーネギー・ホールの舞台に立ち、正式デビューを飾る。その天才少年ぶりは各地で話題を呼び、ディミトリ・ミトロプーロス、ジョージ・セルら巨匠からも激賞された。
「アナザー・パガニーニ」と称されるほどの超絶技巧と美しい音色で人気を博し、10代後半から20代前半にかけてコンサート、録音、演奏旅行に明け暮れていたが、1960年代半ばから消息が途絶えがちになる。その原因は、自分の演奏スタイルに行き詰まっていたためとも、薬物中毒のためともいわれている。本当のところはどうなのだろう。1960年代半ば以降のライヴ音源を聴く限り、出来不出来の差こそあれ、レビンの音楽性が劣化していたとは全く思えない。1972年1月19日、自宅で転倒し、頭部を強打して35歳で死去。自殺説、薬物過剰摂取説もあり、はっきりしたことはわかっていない。
レビンの絶頂期は1950年代後半といわれている。とくに、パガニーニのヴァイオリン協奏曲(1955年)、ブルッフの「スコットランド幻想曲」(1957年)、ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第1番(1957年)、パガニーニの「24のカプリース」(1958年)、ディニークの「ホラ・スタッカート」(1959年)は、シミひとつない艶やかな音色と絢爛たるテクニックを堪能できる名盤である。ただ、ヨーアヒム・ハルトナックが『二十世紀の名ヴァイオリニスト』で指摘しているように、レビンの音のパレットには「ただひとつの色」しかない。「その色は人を酔わせるような美しさを持ち、そして彼は、そのスペクトルの範囲内で音に手を加えることも心得てはいる」が、結局、一色は一色である。解釈の面でも飛び抜けた個性があるわけではない。そのため、繰り返し聴くことによって得られる新たな発見や、同じ演奏家の同曲異盤を聴き比べる面白さといったものは、あまり期待できない。
偉大な先人であるヤッシャ・ハイフェッツの存在も、レビンにとっては大きな壁だった。「スコットランド幻想曲」の録音は、ハイフェッツ盤に勝るとも劣らぬ名演である。にもかかわらず、ハイフェッツ盤がリリースされると同時に引っ込められてしまった。「ホラ・スタッカート」も、レビンはハイフェッツが編曲したものを弾き、その神がかったテクニックと悠揚迫らぬフレージングで、ハイフェッツの演奏を凌駕している。しかし、これも有名なのはハイフェッツ盤の方である。プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番も同様。この作品の知名度を上げたのはハイフェッツだといわれているが、絶好調のレビンがアンドレ・クリュイタンスと組んだ1957年のライヴ録音などを聴いていると、ハイフェッツ盤をそこまで持ち上げる必要があるのか疑問を感じてしまう。それくらい絶品なのだ。

キャリア全盛期の録音だけでなく、晩年のライヴ録音にも注意を払わなければ、レビンを正当に評価しているとはいえない。今はそういう録音がある程度まとまった形で出ているので、「スランプ期」という偏見に惑わされず、虚心坦懐に耳を傾けてもらいたい。
【関連サイト】
マイケル・レビン(CD)
[マイケル・レビン お薦めディスク]
1.
[マイケル・レビン EMI、キャピトル録音集]
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
ブルッフ:スコットランド幻想曲
パガニーニ:24のカプリース
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
ディニーク:ホラ・スタッカート
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
録音:1954年〜1960年
2.
[マイケル・レビン未公開録音集 1947年〜71年]
ラロ:スペイン交響曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
サラサーテ:序奏とタランテラ
ファリャ:スペイン舞曲第1番
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ブルッフ:スコットランド幻想曲
ブルッフ:プレゼンテーション
録音:1947年〜1971年
3.
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 他
ベルリン放送交響楽団
トマス・シッパース指揮
録音:1969年6月
4.
[マイケル・レビン・コレクション]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
モーハウプト:ヴァイオリン協奏曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
スポールディング:無伴奏ヴァイオリンのためのトンボー
録音:1950年〜1969年
1.
[マイケル・レビン EMI、キャピトル録音集]
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番
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パガニーニ:24のカプリース
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲
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J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
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2.
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サラサーテ:序奏とタランテラ
ファリャ:スペイン舞曲第1番
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ブルッフ:スコットランド幻想曲
ブルッフ:プレゼンテーション
録音:1947年〜1971年
3.
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録音:1969年6月
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モーハウプト:ヴァイオリン協奏曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
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