文化 CULTURE

花と冒険[考察・エッセイ]

崖に咲く花はなぜ美しいのか

「文化」についてのエッセイ。
テーマは文学、思想、民俗、絵画、漫画、アイドル、ゲーム、玩具、世相...。
ハイカルチャーとサブカルチャーの境も関係なく、流行も関係なく、
日常の死角にある「文化」を語る。

  • 日本にアパートが本格的に普及したのは、同潤会が設立されてからである。同潤会は、関東大震災後の復興支援として1924年(大正13年)に内務省社会局が始めた住宅供給事業で、東京と横浜に最新型のアパートメント・ハウスを建設したことで注目を集めた。それは耐震耐火の鉄筋コンクリート造で、欧米の建築様式や電気瓦斯などの新技術を取り入れた住宅だった。この「同潤会アパート」...

    [続きを読む](2023.03.14)
  • 残りの生涯、一種類の物しか食べられないとしたら、沖縄そばを選ぶ。沖縄そばとの出会いは1994年。B’zのライブのために訪れた宜野湾市で、タクシー運転手さんお薦めのお店に連れて行ってもらった。澄んだカツオ出汁、とろとろの豚肉、もちもちの麺。こんなに美味しいものがこの世にあることに驚いた。以来、そばじょーぐー(沖縄そば好き)となり、沖縄料理店に行った時はほぼ毎回...

    [続きを読む](2023.02.14)
  • 一時期、私は心身共に疲れ、大好きな読書もできない日々が続いていた。あの頃、彼に出会えていたら、もっと早く前を向くことができたかもしれない。彼の名前はヴィクトール・エミール・フランクル。オーストリア生まれの精神科医、神経科医である。ユダヤ人だったため、1942年(37歳)に強制収容所に連行され、両親、兄、妻を殺害された。妻のお腹の中にいた子供も、収容所へ送られ...

    [続きを読む](2022.12.16)
  • 国木田独歩の短編には名作が多いが、何度も読み返したくなるのは「空知川の岸辺」(明治35年)と「号外」(明治39年)である。ここでは「号外」について書く。舞台は「銀座何丁目の狭い、窮屈な路地にある正宗ホール」。今日もホールに酒飲みたちが集まっている。「ぼろ洋服を着た男爵加藤」は常連客の一人で、飲み仲間には頭のおかしな人だと評されている。それも仕方ない。何しろ男...

    [続きを読む](2022.10.16)
  • セバスチャン・カステリオンは宗教改革の指導者ジャン・カルヴァンを糾弾した16世紀の神学者である。今日、この人の名前を知る機会はほとんどない。日本ではシュテファン・ツヴァイクの『権力とたたかう良心』か、渡辺一夫の『ヒューマニズム考』を読んだ人が話題にする程度だろう。カステリオンは1515年にフランスとスイスの国境地帯に生まれた。リヨン大学で学び、広範な知識を身...

    [続きを読む](2022.08.15)

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