文化 CULTURE

花と冒険[考察・エッセイ]

崖に咲く花はなぜ美しいのか

「文化」についてのエッセイ。
テーマは文学、思想、民俗、絵画、漫画、アイドル、ゲーム、玩具、世相...。
ハイカルチャーとサブカルチャーの境も関係なく、流行も関係なく、
日常の死角にある「文化」を語る。

  • 室生犀星の晩年に連載・刊行された『かげろうの日記遺文』は、それまでに40作以上書かれた「王朝もの」の掉尾を飾る傑作である。1959年に野間文芸賞を受賞した時、銓衡委員の一人、亀井勝一郎は次のように評した。「女びとなるものへの、これほど夢ふかい作品を私は知らない。ちょっと読みにくい文章だが、それが何か薄明のやうな光りを放って、時に執念は凄く、また陰翳のふかい性...

    [続きを読む](2019.06.14)
  • 校正おそるべし、とは「後生畏るべし」のもじりで、編集や校正の経験者なら一度は聞いたことがある箴言みたいなものだ。最初に言いだしたのは「東京日日新聞」の社長、福地桜痴らしい。たしかに校正は怖い。奥が深い。著名な作家の全集には、すぐれた編集者や校正者が関わっているはずなのに、それでもミスがある。

    [続きを読む](2019.05.05)
  • 春になると家持の歌を読みたくなり、本棚から『万葉集』を取り出す。私が好きなのは、巻第十九に収められた三首だ。そのうち二首は天平勝宝5年(753年)の2月23日(太陽暦4月5日)に、一首は2月25日(太陽暦4月7日)に作られている。 二十三日に、興に依りて作る歌二首 春の野に 霞たなびき うら悲し この夕影に うぐひす鳴くも

    [続きを読む](2019.03.17)
  • スイス出身の大ピアニスト、エドウィン・フィッシャーの著書に『音楽の考察』というエッセイ集がある。邦訳もあり、『音楽を愛する友へ』と題されて新潮社から出ていた(1958年初版)。フィッシャーはこの本の中で、演奏家の心得を述べ、「作曲家が作品を懐胎した時に彼が霊感を受けていた状態に、われわれ自身の身を置くこと」の大切さを説き、合理主義に

    [続きを読む](2019.01.26)
  • 『楚辞』は、前漢の学者劉向が楚の詩を十五編集め、それに自身の詩を加えたものである。その後、後漢の王逸が『楚辞』に注釈を付し、自身の詩を加えて『楚辞章句』を編纂した。現存している最古の『楚辞』は、『楚辞章句』である。この詩集で最も大きな存在感を示しているのが、屈原である。懐王に仕える政治家であった屈原は、同輩の嫉妬と憎悪の対象となり讒言され、

    [続きを読む](2018.12.22)