スケ番が好き! 〜昭和に咲いた美しきズベ公たち〜 後篇
2011.04.23
スケ番もののドラマの名作が数々生まれた1980年代だが、そのムーヴメントは1990年代に入るとピタリと止まる。最大の原因は現実世界でのスケ番カルチャーの衰退だろう。90年代に入ると少女達の反抗の仕方は、もっとファッショナブルに洗練されてゆく。スケ番の象徴的アイテムとも言うべき長いスカートやペシャンコの学生カバンはすっかり時代遅れとなり、プロレスの悪役のようなメイクをしてチェーンやカミソリの刃を振り回す女子は激減した。後のギャルファッションに通じるものの萌芽があったのが、今になって思えば90年代初頭だった気がする。
スケ番は絶滅した。そして僕の青春も終わったのだ......。いや、別にスケ番だけが僕の人生だったわけではないので、それはいくらなんでも言い過ぎなのだが、一抹の寂しさを感じていたのは確かだ。松浦亜弥主演の『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』が2006年に公開されたことが救いになりそうなものだったが、残念ながら僕の興味を誘うことはなかった。オリジナルを愛している人間は、リメイク版に対してはどうしても複雑な感情を抱いてしまうものだ。しかし、そんな僕も、2010年には実に愛すべき作品と出会うことが出来た。AKB48によるTVドラマ『マジすか学園』だ。普段はメガネをかけた地味な少女なのに、「マジ」という言葉を耳にすると超人的な喧嘩の達人になってしまう主人公「前田敦子」。自分のことを男だと思っていて、いつも凛々しい短ラン姿の「学ラン」、トリ小屋に閉じ込められると人のトラウマを読みとる恐るべき力が覚醒してしまう「トリゴヤ」、歌舞伎役者のようなメイクと服装で闊歩する2人組「歌舞伎シスターズ」。『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男を彷彿させる悪知恵を働かせて暗躍する「ネズミ」。いつも教室で七輪を囲んでホルモン焼きをしている「チームホルモン」などなど......考えた人は脳みそがトロけていたとしか思えない設定やキャラクターの数々には、本当に唸る外なかった。主題歌「マジスカロックンロール」も、このドラマを絶妙に彩るよく出来た曲であった。
......もっとあっさりとスケ番ものの映画やTVドラマを紹介するつもりだったのだが、随分と脂っぽく書いてしまった自分に少々呆れている。僕は余程スケ番ものが好きらしい。となると、やはり考え始めざるを得ないのは、「何故僕はこんなにもスケ番ものに惹かれてしまうのか?」ということだ。まず、大前提として間違いなく言えるのは、「僕が綺麗な女性が大好きだから」ということだが、それだけでは理由としては不十分であるのは言うまでもない。単に綺麗な女性を見たいのならば、ラブストーリーや青春群像劇などでも良いはずなのだから。「僕が不良カルチャーが好きだから」というのは全くの見当外れ。僕は自分で言うのも何なのだが不良や非行とは縁遠い少年であったし、その世界に憧れたことは1秒たりともない。少年時代にTVでよくやっていた『ビーバップハイスクール』の映画は結構好きで観ていたが、あれはコメディ・タッチな部分を楽しんでいた。そもそも、僕は男子の不良には全然惹かれない。例えば先述した梅宮辰夫主演の『不良番長』シリーズを観ても、「甘えた考えのひどいやつら!」としか思えない。品行方正な『若大将』シリーズの方が僕の肌に断然合う。『クローズZERO』や『ごくせん』なども、観始めて5分も経たない内に寝てしまった記憶しかない。
では、僕がスケ番ものに惹きつけられる理由は何なのか? 一つ確信を持って言えるのは、少々気恥ずかしい告白をする感じなのだが、「スケ番もので頻繁に描かれる女性同士の熱い友情に、素直に共感出来る場合が多いから」ということだ。一応は男性のハシクレであるが故、僕は男性同士の友情描写に対しては、どうしてもシヴィアな見方をしてしまう。「仲間のために」というような美辞麗句に包みつつ、実のところは浅薄な見栄や自己顕示欲に衝き動かされていたり、あるいはいとも容易く寝返ることも珍しくない男性社会の実例を、いくらでも知っているからだと思う。女性社会もおそらくは男性とそんなに変わらず、いやむしろもっと酷い可能性だってあるだろう。しかし、僕は女性社会に関して無知である分、スケ番ものの作品に対しては無邪気に夢見ることが出来てしまう。先ほど「仲間のために」云々といったことを書いたので、僕が100%人間不信のヒネクレ野郎だと感じた人もいると思うが、そうではないつもりでいる。男性同士の友情を見事に描いた大好きな作品だってたくさん挙げられるのだから。しかし、奥深い人物描写、説得力のある設定、巧みに練られた物語がないことには、男性同士の友情にはどうしても共感出来ないのだ。少しでも薄っぺらさや作りの安っぽさが見えると、「この低能な偽善者どもよ、とっとと死んでしまえ〜!」というヒネクレスイッチが心の中でピイピイ作動してしまう。その点、スケ番ものの作品はとことん気楽に、悪い言い方をするならば非常に無責任な態度で友情や絆の美しさを噛み締めることが出来る。おそらく僕はスケ番ものの、そんなところが大好きなのだと思う。
そして今、ふと思ったのだが、先ほど僕が冷たい態度をとってしまった『クローズZERO』や『ごくせん』が大好きな女性達は、実は単にイケメン俳優達にキャアキャア言っているのではなく、僕と同種の理由でこれらの作品を愛しているのではないか? つまり、男性同士の友情を描写しているから、素直に心を動かされることが出来ているのではないだろうか? なんだか気になってきた! 今度『クローズZERO』や『ごくせん』ファンの女性に会ったら質問してみたいところだが......おそらく「このヲタ、バッカじゃないの!」と切り捨てられるのだろう。しつこく「ねえ、なんで? なんでなの?」と迫りでもしたら通報されて逮捕されるのがオチだろう。どうせ通報するならばスケバン刑事にして欲しい。スケバン刑事に逮捕されるならば、僕は本望だ。あっ、出来れば2代目のナンノでお願いします。
【関連サイト】
AKB48 マジすか学園 DVD-BOX
スケ番は絶滅した。そして僕の青春も終わったのだ......。いや、別にスケ番だけが僕の人生だったわけではないので、それはいくらなんでも言い過ぎなのだが、一抹の寂しさを感じていたのは確かだ。松浦亜弥主演の『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』が2006年に公開されたことが救いになりそうなものだったが、残念ながら僕の興味を誘うことはなかった。オリジナルを愛している人間は、リメイク版に対してはどうしても複雑な感情を抱いてしまうものだ。しかし、そんな僕も、2010年には実に愛すべき作品と出会うことが出来た。AKB48によるTVドラマ『マジすか学園』だ。普段はメガネをかけた地味な少女なのに、「マジ」という言葉を耳にすると超人的な喧嘩の達人になってしまう主人公「前田敦子」。自分のことを男だと思っていて、いつも凛々しい短ラン姿の「学ラン」、トリ小屋に閉じ込められると人のトラウマを読みとる恐るべき力が覚醒してしまう「トリゴヤ」、歌舞伎役者のようなメイクと服装で闊歩する2人組「歌舞伎シスターズ」。『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男を彷彿させる悪知恵を働かせて暗躍する「ネズミ」。いつも教室で七輪を囲んでホルモン焼きをしている「チームホルモン」などなど......考えた人は脳みそがトロけていたとしか思えない設定やキャラクターの数々には、本当に唸る外なかった。主題歌「マジスカロックンロール」も、このドラマを絶妙に彩るよく出来た曲であった。
......もっとあっさりとスケ番ものの映画やTVドラマを紹介するつもりだったのだが、随分と脂っぽく書いてしまった自分に少々呆れている。僕は余程スケ番ものが好きらしい。となると、やはり考え始めざるを得ないのは、「何故僕はこんなにもスケ番ものに惹かれてしまうのか?」ということだ。まず、大前提として間違いなく言えるのは、「僕が綺麗な女性が大好きだから」ということだが、それだけでは理由としては不十分であるのは言うまでもない。単に綺麗な女性を見たいのならば、ラブストーリーや青春群像劇などでも良いはずなのだから。「僕が不良カルチャーが好きだから」というのは全くの見当外れ。僕は自分で言うのも何なのだが不良や非行とは縁遠い少年であったし、その世界に憧れたことは1秒たりともない。少年時代にTVでよくやっていた『ビーバップハイスクール』の映画は結構好きで観ていたが、あれはコメディ・タッチな部分を楽しんでいた。そもそも、僕は男子の不良には全然惹かれない。例えば先述した梅宮辰夫主演の『不良番長』シリーズを観ても、「甘えた考えのひどいやつら!」としか思えない。品行方正な『若大将』シリーズの方が僕の肌に断然合う。『クローズZERO』や『ごくせん』なども、観始めて5分も経たない内に寝てしまった記憶しかない。
では、僕がスケ番ものに惹きつけられる理由は何なのか? 一つ確信を持って言えるのは、少々気恥ずかしい告白をする感じなのだが、「スケ番もので頻繁に描かれる女性同士の熱い友情に、素直に共感出来る場合が多いから」ということだ。一応は男性のハシクレであるが故、僕は男性同士の友情描写に対しては、どうしてもシヴィアな見方をしてしまう。「仲間のために」というような美辞麗句に包みつつ、実のところは浅薄な見栄や自己顕示欲に衝き動かされていたり、あるいはいとも容易く寝返ることも珍しくない男性社会の実例を、いくらでも知っているからだと思う。女性社会もおそらくは男性とそんなに変わらず、いやむしろもっと酷い可能性だってあるだろう。しかし、僕は女性社会に関して無知である分、スケ番ものの作品に対しては無邪気に夢見ることが出来てしまう。先ほど「仲間のために」云々といったことを書いたので、僕が100%人間不信のヒネクレ野郎だと感じた人もいると思うが、そうではないつもりでいる。男性同士の友情を見事に描いた大好きな作品だってたくさん挙げられるのだから。しかし、奥深い人物描写、説得力のある設定、巧みに練られた物語がないことには、男性同士の友情にはどうしても共感出来ないのだ。少しでも薄っぺらさや作りの安っぽさが見えると、「この低能な偽善者どもよ、とっとと死んでしまえ〜!」というヒネクレスイッチが心の中でピイピイ作動してしまう。その点、スケ番ものの作品はとことん気楽に、悪い言い方をするならば非常に無責任な態度で友情や絆の美しさを噛み締めることが出来る。おそらく僕はスケ番ものの、そんなところが大好きなのだと思う。
そして今、ふと思ったのだが、先ほど僕が冷たい態度をとってしまった『クローズZERO』や『ごくせん』が大好きな女性達は、実は単にイケメン俳優達にキャアキャア言っているのではなく、僕と同種の理由でこれらの作品を愛しているのではないか? つまり、男性同士の友情を描写しているから、素直に心を動かされることが出来ているのではないだろうか? なんだか気になってきた! 今度『クローズZERO』や『ごくせん』ファンの女性に会ったら質問してみたいところだが......おそらく「このヲタ、バッカじゃないの!」と切り捨てられるのだろう。しつこく「ねえ、なんで? なんでなの?」と迫りでもしたら通報されて逮捕されるのがオチだろう。どうせ通報するならばスケバン刑事にして欲しい。スケバン刑事に逮捕されるならば、僕は本望だ。あっ、出来れば2代目のナンノでお願いします。
(田中大)
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