2007年〜2011年のモーニング娘。 後になって評価される前に
2011.06.04
モーニング娘。ブームとはいつ頃のことを指すのか。そうきかれた時、多くの人が思い浮かべるのは「LOVEマシーン」以降の数年間だろう。そのブームがいつ過ぎたのかは、何事につけ前倒しで「終わった」と書きたがるマスコミの傾向もあるので分からないが、ここ数年のことではないはず。おそらくもっと前である。そして、現在のモーニング娘。はというと、魅力的な個性と豊かな才能に恵まれたメンバーを擁しながらも、「ブームは終わった」という前提で見られ、本質的な部分に対する評価はハナから度外視されている。アイドルにとってこの前提ほど重いハンデはない。
かくいう私はモーニング娘。に詳しいと言える立場にない。特別な思い入れがあるわけでもない。顔と名前が一致する程度の基本情報は知っていたが、この6、7年間はほとんどチェックしておらず、誰が在籍しているのかもよく分かっていなかった。そういうスタンスで書くことだから、長年モーニング娘。を応援している人や批判している人には「今さら」な話になるだろう、とあらかじめことわっておく。
スタートラインは昨年半ば、たまたま見ていた歌番組である。そこで高橋愛と田中れいながソロで歌っているのを聴き、こちらが想定していた以上にうまかったことに虚をつかれた。さらにその後、動画サイトで「なんちゃって恋愛」のミュージックビデオを見て目を疑った。こんな風に魅せるパフォーマンスをするグループになっていたのか、と。そして見終えた後、自分はこのグループが迎えていた大事な局面ーー真のピークとも呼ぶべき時期を見逃していたのではないかという遣る瀬ない喪失感に襲われた。
「なんちゃって恋愛」は2009年8月にリリースされた40枚目のシングルである。切ないメロディーで編まれた綺麗な曲だが、無難にまとめることなく、ラップを挿むことによってサビの疾走感と高揚感を際立たせている。正直、アイドルがやるラップには聴くに堪えないものが多いが、この曲で使われるラップはメロディーとうまく絡むことで曲調になじんでいる。曲全体の構成も巧みで、大胆ながらも渋滞感のないリズム展開で一気に最後まで聴かせ、木枯らしの後の澄んだ空気のように寂しくも美しい余韻を残す。ただ、音がやたら硬質な割に薄い。ここは好みが分かれるところだ。
この曲は振付も秀逸で、一度見たら忘れられないほど印象的である。あまり動画ばかり見ていても何なのでCDを購入したが、そこに付いていた「Dance Shot Ver.」の映像は通常のミュージックビデオの数倍見応えがあった。
それから虚心坦懐にここ数年の作品をあれこれ聴いたり、ミュージックビデオを見たりしているうちに、魅力的な楽曲をいくつか発見することができた。アルバムでは『10 MY ME』が格別に充実している。一曲一曲の個性が豊かで、旋律発想も天衣無縫である。
忌憚なく言って、タイトルで損をしている曲が多い。私が楽曲をあれこれチェックし始めてからしばらくしてリリースされたシングルも「女と男のララバイゲーム」ときた。ここから誰もが連想するのは、素面ではとても歌えない昭和末期のデュエットソングだろう。こういうアクの強いタイトルのハードルを越えて「よし聴こう」と思う人はかなり限られてくるのではないか。実際に聴いてみると、中毒性の高い、よくできた曲なのだが。
つんく♂の歌詞は基本的に直球、もしくはこれみよがしの変化球で、詩的な比喩を駆使する感じではない。もったいぶった言い回しなんか使いたくない、という彼なりの美学があるのかどうか知らないが、もっとオブラートに包んで書いてほしいという人は多いと思う。
ただ、こういう歌詞は、音源ではピンと来なくても、コンサートで歌われると刺さるような鋭さと重みを帯びることがある。
楽曲以上に評価すべきは、メンバーのパフォーマンス能力である。難易度の高いダンスと統制されたシンクロ、そしてアグレッシヴなダンスをしながら聴かせる生歌。私の認識では、このグループはコンサートで口パクをしていないはずなので、それを前提にして言うなら、数名のメンバーの歌唱力はかなり安定している。ダンスの振付が激しくなり複雑化している中、あそこまで歌える人はアイドルではあまり見かけない。比較の対象としてアイドルを引き合いに出すこと自体、無理があるかもしれない。
振付の影響からか、喉に結構な負担がかかっていることもあるが、大半のメンバーの声質は浸透力があって、歌声も非常によく通るので、これがコンサートでは大きな武器となっている。少なくとも歌がないがしろにされるということはない。あくまでも歌手なのだ。
バレエ経験者で歌唱力にも定評のある高橋愛が果たしてきた役割の大きさも、過去のコンサートDVDなどを見るとよく分かる。たとえば、今、ファンの誰かが「モー娘。は歌とダンスのレベルが高い」と言う時、おそらくその発言の一番の拠り所となっているのは彼女の表現力である。そのパフォーマンスには「言われたとおりやってます」というアイドルらしいお仕着せ感がない。歌詞も振付もしっかり咀嚼した上で表現している。一見優等生タイプに見えるが、案外ちゃんと理解できるまで動き出さない頑固なタイプなのかもしれない。
しかし、その高橋愛がリーダーに就任した2007年から現在まで、モーニング娘。に注意を払ってきた人が世間にどれくらいいただろう。彼女は今年の秋にモーニング娘。を卒業する。それを知っていながらこういうことを書いていても、一抹のむなしさがつきまとう。遅きに失するとはこのことである。
【関連サイト】
モーニング娘。OFFICIAL WEBSITE
モーニング娘。Official Channel
「なんちゃって恋愛」
『10 MY ME』
2007年〜2011年のモーニング娘。 後になって評価される前に [続き]
かくいう私はモーニング娘。に詳しいと言える立場にない。特別な思い入れがあるわけでもない。顔と名前が一致する程度の基本情報は知っていたが、この6、7年間はほとんどチェックしておらず、誰が在籍しているのかもよく分かっていなかった。そういうスタンスで書くことだから、長年モーニング娘。を応援している人や批判している人には「今さら」な話になるだろう、とあらかじめことわっておく。
スタートラインは昨年半ば、たまたま見ていた歌番組である。そこで高橋愛と田中れいながソロで歌っているのを聴き、こちらが想定していた以上にうまかったことに虚をつかれた。さらにその後、動画サイトで「なんちゃって恋愛」のミュージックビデオを見て目を疑った。こんな風に魅せるパフォーマンスをするグループになっていたのか、と。そして見終えた後、自分はこのグループが迎えていた大事な局面ーー真のピークとも呼ぶべき時期を見逃していたのではないかという遣る瀬ない喪失感に襲われた。
「なんちゃって恋愛」は2009年8月にリリースされた40枚目のシングルである。切ないメロディーで編まれた綺麗な曲だが、無難にまとめることなく、ラップを挿むことによってサビの疾走感と高揚感を際立たせている。正直、アイドルがやるラップには聴くに堪えないものが多いが、この曲で使われるラップはメロディーとうまく絡むことで曲調になじんでいる。曲全体の構成も巧みで、大胆ながらも渋滞感のないリズム展開で一気に最後まで聴かせ、木枯らしの後の澄んだ空気のように寂しくも美しい余韻を残す。ただ、音がやたら硬質な割に薄い。ここは好みが分かれるところだ。
この曲は振付も秀逸で、一度見たら忘れられないほど印象的である。あまり動画ばかり見ていても何なのでCDを購入したが、そこに付いていた「Dance Shot Ver.」の映像は通常のミュージックビデオの数倍見応えがあった。
それから虚心坦懐にここ数年の作品をあれこれ聴いたり、ミュージックビデオを見たりしているうちに、魅力的な楽曲をいくつか発見することができた。アルバムでは『10 MY ME』が格別に充実している。一曲一曲の個性が豊かで、旋律発想も天衣無縫である。
忌憚なく言って、タイトルで損をしている曲が多い。私が楽曲をあれこれチェックし始めてからしばらくしてリリースされたシングルも「女と男のララバイゲーム」ときた。ここから誰もが連想するのは、素面ではとても歌えない昭和末期のデュエットソングだろう。こういうアクの強いタイトルのハードルを越えて「よし聴こう」と思う人はかなり限られてくるのではないか。実際に聴いてみると、中毒性の高い、よくできた曲なのだが。
つんく♂の歌詞は基本的に直球、もしくはこれみよがしの変化球で、詩的な比喩を駆使する感じではない。もったいぶった言い回しなんか使いたくない、という彼なりの美学があるのかどうか知らないが、もっとオブラートに包んで書いてほしいという人は多いと思う。
ただ、こういう歌詞は、音源ではピンと来なくても、コンサートで歌われると刺さるような鋭さと重みを帯びることがある。
楽曲以上に評価すべきは、メンバーのパフォーマンス能力である。難易度の高いダンスと統制されたシンクロ、そしてアグレッシヴなダンスをしながら聴かせる生歌。私の認識では、このグループはコンサートで口パクをしていないはずなので、それを前提にして言うなら、数名のメンバーの歌唱力はかなり安定している。ダンスの振付が激しくなり複雑化している中、あそこまで歌える人はアイドルではあまり見かけない。比較の対象としてアイドルを引き合いに出すこと自体、無理があるかもしれない。
振付の影響からか、喉に結構な負担がかかっていることもあるが、大半のメンバーの声質は浸透力があって、歌声も非常によく通るので、これがコンサートでは大きな武器となっている。少なくとも歌がないがしろにされるということはない。あくまでも歌手なのだ。
バレエ経験者で歌唱力にも定評のある高橋愛が果たしてきた役割の大きさも、過去のコンサートDVDなどを見るとよく分かる。たとえば、今、ファンの誰かが「モー娘。は歌とダンスのレベルが高い」と言う時、おそらくその発言の一番の拠り所となっているのは彼女の表現力である。そのパフォーマンスには「言われたとおりやってます」というアイドルらしいお仕着せ感がない。歌詞も振付もしっかり咀嚼した上で表現している。一見優等生タイプに見えるが、案外ちゃんと理解できるまで動き出さない頑固なタイプなのかもしれない。
しかし、その高橋愛がリーダーに就任した2007年から現在まで、モーニング娘。に注意を払ってきた人が世間にどれくらいいただろう。彼女は今年の秋にモーニング娘。を卒業する。それを知っていながらこういうことを書いていても、一抹のむなしさがつきまとう。遅きに失するとはこのことである。
(阿部十三)
【関連サイト】
モーニング娘。OFFICIAL WEBSITE
モーニング娘。Official Channel
「なんちゃって恋愛」
『10 MY ME』
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