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2013年のモーニング娘。 百聞は一見にしかず [続き]

2013.07.13
 モーニング娘。は単純にグループとして魅力があり、鉱脈のように「人財」で潤っている。メンバーの卒業や加入で体制が変わっても、バランスが崩れることはない。そのバランスも、いかにも整然とした感じではなく、ちょっと分かりにくいものである。しかし、時間が経つにつれ、「すでに卒業したメンバーたちがまだ現体制に残っていたら」という仮定が、徐々に考えにくいものになってくる。その時その時で、グループとしてちゃんと答えを出していることが分かってくるのだ。

 彼女たちの才能は歌やダンスやトークだけでなく、演技にも及んでいる。6月23日に千秋楽を迎えた大人の麦茶×ゲキハロの「ごがくゆう」では、石田亜佑美のコメディエンヌぶりが新鮮で、その演技力に目を奪われた。とくに前半の彼女は水を得た魚のようで、舞台をぐいぐい牽引していたのが印象的。2012年の「ステーシーズ」の時も書いたが、役に入り込むのがうまいのである。過去にどれくらい演技経験があるだろうか。

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 脚本は喜劇と悲劇と感動をミックスさせた内容で、前半は概してコミカル。ただし、土台の部分では緊張感が維持されている。後半はエリザベス朝悲劇を彷彿させる惨劇へと変容するが、最終的には、運命の分岐点となる場面まで時間が巻き戻され、惨劇を回避するようにして話が進み、ハッピーエンドにこぎつける。全く異なるエンディングを2種見せることで運命について考えさせる構造になっている。

 出演メンバーそれぞれに見せ場があり、与えられた役を手堅く肉付けして演じていたが、その様子を見て頼もしさを感じたのは私だけではないだろう。中には、各々の役がある程度まで自身のキャラクターにフィットしていたから演じやすかったのでは、と考える人もいるかもしれない。しかし、だからといって必ずしも舞台上で演技として昇華させることに成功するとは限らないのである。そういう意味でも、皆健闘していた。

 なんだかんだいっても、モーニング娘。のメンバーは強い個性を備えているし、才能にも恵まれている。その個性と才能でお互いに足りない部分を不思議と補い合うことが出来ている。「今後どうなっていくのか」という心配がないわけではないが、私自身は、与えられたものを楽しみたい、と基本的には思っている。

 忌憚なくいって、2013年前半を振り返ると、今のモーニング娘。とは関係のないネガティブな話題で、「元モーニング娘。」というワードを見たり聞いたりすることが非常に多かった。分かりやすい肩書きなので避けようのないことだが、極端な頻用は光背効果を招きかねない。ある個人ないし団体の中で、何か一つ顕著なポイントがあると、第三者(理解のある人は除く)が抱くイメージは全体的にその方向へと引っ張られる。固有名詞の認知度と、実像の認知度に差がある場合にも、そういうことが起こりやすい。

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 こんな時、今のモーニング娘。をテレビなどで確認してもらえれば良いのだが、現状まだその機会に恵まれているとはいいがたい。
 だからこそ、先日出演したTBSの番組「音楽の日」(2013年6月29日)で、司会者が口にした「いやー、健在ですね、モーニング娘。の皆さん」というなにげない言葉が、大きな救いになったりする。あれを聞いた時、私は溜飲が下がる思いがした。

 2013年7月。モーニング娘。のメンバーは、道重さゆみ、譜久村聖、生田衣梨奈、鞘師里保、鈴木香音、飯窪春菜、石田亜佑美、佐藤優樹、工藤遥、小田さくらである。彼女たちは「モーニング娘。」の看板をスタッフと共に守り、つんく♂の感性やパッションが乱反射する楽曲に対応しながら、果敢に前進し続けている。ステージ上では、「女子だから」という理由で大目に見てもらおうともしない。少なくとも、そんなことを狙っている感じがしない。自分自身が成長すれば、モーニング娘。の真価をもっと知ってもらえるはずだと信じているのである。そのため、グループとして常に熱い状態にある。現在のモーニング娘。を知らなければ、モーニング娘。を知っていることにはならない。百聞は一見にしかず。この言葉は、彼女たちのためにある。
(阿部十三)


【関連サイト】
モーニング娘。OFFICIAL WEBSITE
モーニング娘。Official Channel
2013年のモーニング娘。 百聞は一見にしかず

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