モーニング娘。'15 鞘師里保の卒業とグループの展望
2015.12.12
2011年1月2日にモーニング娘。に加入した鞘師里保が、2015年12月31日にグループを卒業する。17歳の決断である。ブログ上で卒業が発表されたのは2015年10月29日のこと。この突然の出来事についてはすでに多くの記事が書かれており、本人へのインタビューも行われているので、今さら何か書いても、という気がしなくもないが、やはり自分が感じたことは記しておこうと思う。
元々ダンス経験者だった鞘師は、12歳でメンバーになったときから、普通ならばその年齢の子には望めないレベルのパフォーマンス力を示していた。「ライバル サバイバル」ツアーで一区切りついたモーニング娘。の体制の過渡期に、即戦力として入ってきたメンバーだと言える。2011年春の「新創世記 ファンタジーDX」ツアーで、ベテランのメンバーに伍して「Moonlight night 〜月夜の晩だよ〜」を歌い踊っていた光景は今でも思い出すことができる。あの数分間を体験した後、私は「モーニング娘。はまだまだ続く」と確信し、それまで1年ほど意識して観たり聴いたりしてきた「老舗グループ」について書くことにした。
2012年5月初披露の「One・Two・Three」で大きくフィーチャーされた鞘師は、この頃からモーニング娘。が打ち出してきたEDM路線やフォーメーションダンス(厳密には、2009年の「なんちゃって恋愛」「気まぐれプリンセス」なども凝ったフォーメーションである)を定着させる上で、グループのパフォーマンスを支え、なおかつ牽引する役割を担った。キャラクターは周囲と馴れ合わないタイプで、ストイックと言われることもあったが、辺りを払う毅然とした舞台姿とは裏腹に、日常生活でよく転ぶ、よく忘れ物をする、よく寝坊するドジな面を持つ女の子としてファンに愛された。
EDM路線やフォーメーションダンスなどの特徴を作り、外に向けてアピールするやり方は、当時のモーニング娘。には有効なことだった。これらによって「今どんなグループになっているのか」はある程度知られるようになり、各メンバーが「動きを揃えて一つの形を作る」という意識を強く持つことで、ステージ上でのグループの一体感も増したのだ。以前も書いたように、各メンバーの表現の個性的な部分やスキルが見えにくくなったのも事実だが、鞘師の場合、ちょっとした動きの違いでも才能の違いを感じさせた。
やがてモーニング娘。はメディア露出を増やしてゆき、それに伴いファン層も広がり、2013年8月に「わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団」がリリースされる頃には、最も勢いのあるアイドル・グループの一つになるわけだが、ほぼ同じ時期、つんく♂がハロー!プロジェクトの総合プロデューサーを降りる話が出ていたという(つんく♂著『だから、生きる。』より)。この年、12期メンバー・オーディションの合格者が出なかったことや、オリジナル・アルバムが作られなかったことも、何か関係があるのだろうか。
2015年になると、鞘師はそれまで自己表現の場としていたソロ・ラジオ番組「RIHO-DELI」の枠を新人メンバーに引き継いで、人気番組「MBS ヤングタウン土曜日」にレギュラー出演し、新たな活動を見せていた。ただ、改めて春の「GRADATION」ツアーを振り返ってみると、地元の広島公演で「モーニング娘。'15になってから、私もいろいろ心境の変化が月毎にあった」と語っており、さらに大阪公演ではモーニング娘。'15について「思ったよりも早く完成した」と語っている。これらはツアーの密着映像を収録した「DVD MAGAZINE VOL.75」で確認することができる。「心境の変化」とは卒業への意識を指していたのだろう。
モーニング娘。というグループは、完成形になると新たな体制に変わる。それはあらかじめ企図されたものではなく、自然とそうなってしまうらしい。5月末に行われた日本武道館公演を観たとき、私はメンバー全員が一丸となってこの公演を成功させるのだと燃えている様子に打たれたし、ステージングの質の面でも急ピッチで高めてきたような印象を受けたが、新体制の特色を世に知らしめているとは言えない段階で、これを完成形とするのはまだ早いと考えていた。しかし、「モーニング娘。'15」はここで完成していたのである。
2015年7月には体調を崩したと報じられ、何か尋常ではない感じがしたものだが、8月には前述のラジオ番組で、20歳まではモーニング娘。をやりたいという意味の発言をしていた。しかし、この時点で、もしかすると次に卒業するのは彼女かもしれない、という予感は植え付けられていたとも言える。だから卒業発表があったときは、その唐突なタイミングと発表の仕方に驚かされはしたものの、卒業順としての意外さはなかった。
「卒業メモリアル」のDVDでは、急に自分の人生のことをいろいろ考えるようになり、卒業タイミングは今なのかなと思ったと語っているが、これが考えすぎる17歳のリアルなのかもしれないし、これ以上説明のしようがないのかもしれない。いずれにせよ、鞘師里保は「One・Two・Three」以降の「新生モーニング娘。」を印象付けたメンバーの一人として大きな足跡を残した。2015年12月7日の日本武道館公演初日、彼女がこの曲を歌う前に「私を一番成長させてくれた曲です」と紹介したとき、言葉の重みを感じた人は少なくないはずだ。
彼女はクールな雰囲気をまといながらも、幼稚園の頃から大好きだったモーニング娘。を盛り上げるために、そして、かつての「全盛期」を乗り越えるために情熱を捧げた闘志あふれるメンバーだった。口先だけの優等生ではなく、本当の意味でベストを尽くし、きちんと結果を出そうとする姿勢は、コンサートのたびに見て取れたものだ。パフォーマンス面では、EDMとフォーメーションダンスを続けていく過程で、激しさと滑らかさを併せ持つ見応えのあるダンスと、それによって乱れた呼吸(および楽曲の音圧)を封じるような迫力あるボーカル、というスタイルが一種のトレードマークのようになったが、一方、舞台の活動ではそれだけにとどまらない魅力を感じさせる場面も多く見られ、歌唱面でも演技面でも未知の表現方法を吸収しようとする貪欲さを示していた。自分に満足できず、完成形のメンバーとなって落ち着く境地とはかけ離れた地点で、常にもっと変わらなければならないと葛藤していたことは、卒業発表後に行われたインタビューの節々からもうかがえる。
12月29日には60thシングル「冷たい風と片思い/ENDLESS SKY/One and Only」が発売される。3曲ともモーニング娘。'15の13人にしか出せないハーモニーを重視した楽曲と言っていいだろう。メロディーも構成も凝ってはいるが、奇抜さや斬新さを前面に出したものではなく、耳に比較的すんなり入ってくる。この卒業シングルがリリースされた後、12月31日に鞘師はグループから巣立つ。「卒業発表→卒業コンサートツアー」という儀式的なパターンを最後の最後に崩したのは、誰にも飼いならされることのない彼女らしさだと考えておきたい。17歳で方向転換を決めたのは英断と言えるかもしれないし、これからの活動でそう思わせてほしいと願っている。
本当に何が起こるか分からないのがモーニング娘。である。どのメンバーも当たり前のようにいるわけではなく、不思議なめぐりあわせで私たちの前にいる。結局は、誰もが卒業する。それが必然だからこそ、めぐりあわせが変わることを惜しまずにいられない。しかし自分の力に賭けて未来に挑むこと自体は美しいし、美しいということは、すなわち正しいということなのだ。
【関連サイト】
モーニング娘。'15 鞘師里保の卒業とグループの展望 [続き]
OFFICIAL WEBSITE
Official Channel(YouTube)
ハロ!ステ(Hello! Project Station)
元々ダンス経験者だった鞘師は、12歳でメンバーになったときから、普通ならばその年齢の子には望めないレベルのパフォーマンス力を示していた。「ライバル サバイバル」ツアーで一区切りついたモーニング娘。の体制の過渡期に、即戦力として入ってきたメンバーだと言える。2011年春の「新創世記 ファンタジーDX」ツアーで、ベテランのメンバーに伍して「Moonlight night 〜月夜の晩だよ〜」を歌い踊っていた光景は今でも思い出すことができる。あの数分間を体験した後、私は「モーニング娘。はまだまだ続く」と確信し、それまで1年ほど意識して観たり聴いたりしてきた「老舗グループ」について書くことにした。
2012年5月初披露の「One・Two・Three」で大きくフィーチャーされた鞘師は、この頃からモーニング娘。が打ち出してきたEDM路線やフォーメーションダンス(厳密には、2009年の「なんちゃって恋愛」「気まぐれプリンセス」なども凝ったフォーメーションである)を定着させる上で、グループのパフォーマンスを支え、なおかつ牽引する役割を担った。キャラクターは周囲と馴れ合わないタイプで、ストイックと言われることもあったが、辺りを払う毅然とした舞台姿とは裏腹に、日常生活でよく転ぶ、よく忘れ物をする、よく寝坊するドジな面を持つ女の子としてファンに愛された。
EDM路線やフォーメーションダンスなどの特徴を作り、外に向けてアピールするやり方は、当時のモーニング娘。には有効なことだった。これらによって「今どんなグループになっているのか」はある程度知られるようになり、各メンバーが「動きを揃えて一つの形を作る」という意識を強く持つことで、ステージ上でのグループの一体感も増したのだ。以前も書いたように、各メンバーの表現の個性的な部分やスキルが見えにくくなったのも事実だが、鞘師の場合、ちょっとした動きの違いでも才能の違いを感じさせた。
やがてモーニング娘。はメディア露出を増やしてゆき、それに伴いファン層も広がり、2013年8月に「わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団」がリリースされる頃には、最も勢いのあるアイドル・グループの一つになるわけだが、ほぼ同じ時期、つんく♂がハロー!プロジェクトの総合プロデューサーを降りる話が出ていたという(つんく♂著『だから、生きる。』より)。この年、12期メンバー・オーディションの合格者が出なかったことや、オリジナル・アルバムが作られなかったことも、何か関係があるのだろうか。
2015年になると、鞘師はそれまで自己表現の場としていたソロ・ラジオ番組「RIHO-DELI」の枠を新人メンバーに引き継いで、人気番組「MBS ヤングタウン土曜日」にレギュラー出演し、新たな活動を見せていた。ただ、改めて春の「GRADATION」ツアーを振り返ってみると、地元の広島公演で「モーニング娘。'15になってから、私もいろいろ心境の変化が月毎にあった」と語っており、さらに大阪公演ではモーニング娘。'15について「思ったよりも早く完成した」と語っている。これらはツアーの密着映像を収録した「DVD MAGAZINE VOL.75」で確認することができる。「心境の変化」とは卒業への意識を指していたのだろう。
モーニング娘。というグループは、完成形になると新たな体制に変わる。それはあらかじめ企図されたものではなく、自然とそうなってしまうらしい。5月末に行われた日本武道館公演を観たとき、私はメンバー全員が一丸となってこの公演を成功させるのだと燃えている様子に打たれたし、ステージングの質の面でも急ピッチで高めてきたような印象を受けたが、新体制の特色を世に知らしめているとは言えない段階で、これを完成形とするのはまだ早いと考えていた。しかし、「モーニング娘。'15」はここで完成していたのである。
2015年7月には体調を崩したと報じられ、何か尋常ではない感じがしたものだが、8月には前述のラジオ番組で、20歳まではモーニング娘。をやりたいという意味の発言をしていた。しかし、この時点で、もしかすると次に卒業するのは彼女かもしれない、という予感は植え付けられていたとも言える。だから卒業発表があったときは、その唐突なタイミングと発表の仕方に驚かされはしたものの、卒業順としての意外さはなかった。
「卒業メモリアル」のDVDでは、急に自分の人生のことをいろいろ考えるようになり、卒業タイミングは今なのかなと思ったと語っているが、これが考えすぎる17歳のリアルなのかもしれないし、これ以上説明のしようがないのかもしれない。いずれにせよ、鞘師里保は「One・Two・Three」以降の「新生モーニング娘。」を印象付けたメンバーの一人として大きな足跡を残した。2015年12月7日の日本武道館公演初日、彼女がこの曲を歌う前に「私を一番成長させてくれた曲です」と紹介したとき、言葉の重みを感じた人は少なくないはずだ。
彼女はクールな雰囲気をまといながらも、幼稚園の頃から大好きだったモーニング娘。を盛り上げるために、そして、かつての「全盛期」を乗り越えるために情熱を捧げた闘志あふれるメンバーだった。口先だけの優等生ではなく、本当の意味でベストを尽くし、きちんと結果を出そうとする姿勢は、コンサートのたびに見て取れたものだ。パフォーマンス面では、EDMとフォーメーションダンスを続けていく過程で、激しさと滑らかさを併せ持つ見応えのあるダンスと、それによって乱れた呼吸(および楽曲の音圧)を封じるような迫力あるボーカル、というスタイルが一種のトレードマークのようになったが、一方、舞台の活動ではそれだけにとどまらない魅力を感じさせる場面も多く見られ、歌唱面でも演技面でも未知の表現方法を吸収しようとする貪欲さを示していた。自分に満足できず、完成形のメンバーとなって落ち着く境地とはかけ離れた地点で、常にもっと変わらなければならないと葛藤していたことは、卒業発表後に行われたインタビューの節々からもうかがえる。
12月29日には60thシングル「冷たい風と片思い/ENDLESS SKY/One and Only」が発売される。3曲ともモーニング娘。'15の13人にしか出せないハーモニーを重視した楽曲と言っていいだろう。メロディーも構成も凝ってはいるが、奇抜さや斬新さを前面に出したものではなく、耳に比較的すんなり入ってくる。この卒業シングルがリリースされた後、12月31日に鞘師はグループから巣立つ。「卒業発表→卒業コンサートツアー」という儀式的なパターンを最後の最後に崩したのは、誰にも飼いならされることのない彼女らしさだと考えておきたい。17歳で方向転換を決めたのは英断と言えるかもしれないし、これからの活動でそう思わせてほしいと願っている。
本当に何が起こるか分からないのがモーニング娘。である。どのメンバーも当たり前のようにいるわけではなく、不思議なめぐりあわせで私たちの前にいる。結局は、誰もが卒業する。それが必然だからこそ、めぐりあわせが変わることを惜しまずにいられない。しかし自分の力に賭けて未来に挑むこと自体は美しいし、美しいということは、すなわち正しいということなのだ。
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