「シェイクスピア」と一致するもの
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凄絶なるもの ベートーヴェンの序曲『コリオラン』は1807年初めに作曲され、早くも同年3月、作曲者自身の指揮により初演された。タイトルの通り、ハインリヒ・ヨーゼフ・コリンの戯曲『コリオラン』のために書かれた音楽である。一説によると、ベートーヴェンはこの劇が何の音楽もなく上演されているのを見て、序曲を書こうと思い立ったらしい。出版年は1808年。作品はコリンに...
[続きを読む](2024.05.18) -
フェードルの場合 ラシーヌの悲劇『フェードル』で、フェードルはある言葉に対して恐れに近い反応を見せる。それは人の名前、愛してはいけないのに愛してしまった義理の息子イポリートの名前である。 フェードルはギリシャ神話に出てくるクレタ島の王ミノスの娘であり、アテナイの王テーゼの妻である。テーゼにはアマゾン(女性だけの部族)の女王アンティオペーとの間に子供がいる。そ...
[続きを読む](2020.08.12) -
フランスの思想家ジョゼフ・ド・メーストルは、社会の秩序のためには刑吏(処刑人)の存在が不可欠であると考えていた。「あらゆる偉大さ、あらゆる権勢、あらゆる従属は、〈刑吏〉に基礎をおいている。彼は人間社会の恐怖であり、また、その鎖なのである。世界からこの不可解な存在を取り除いてみるがよい。たちどころに、秩序は混乱たる状態にかわり、王座はくつがえり、社会は消える...
[続きを読む](2019.10.27) -
『地上より永遠に』(1953年)に印象的な場面がある。ホノルルの兵営に配属されたプルーイット二等兵が、かつてボクシングで親友に大きな怪我を負わせたことをクラブのホステスに話すシーンだ。その語り方は、内に抱える苦しみをにじませていて、いわゆるお芝居らしいテンポがない。このように内向的で生々しい演技は当時のハリウッドではまだ珍しく、多くの名優が出演しているこの...
[続きを読む](2019.10.07) -
ウィリアム・シェイクスピアの「ロマンス劇」は1608年から1611年頃にかけて書かれたとみられている。その4作、『ペリクリーズ』『シンベリン』『冬物語』『テンペスト』には作品の傾向として似通った部分が多く、その点からも、一定の期間内に着手されたと考えるのは不自然ではない。 主な共通項を列挙しておくと、まず4作品とも夫婦や親子が離ればなれになり、後に再会を果...
[続きを読む](2016.09.10) -
情熱はあくまでも監督業に オーソン・ウェルズの監督作には権力者の破滅や没落を描いたものが目立つ。『市民ケーン』(1941年)や『偉大なるアンバーソン家の人々』(1942年)はもちろんのこと、シェイクスピア原作の『マクベス』(1948年)や『オセロ』(1952年)、日本未公開の『秘められた過去(Mr. Arkadin)』(1955年)、ハリウッド最後の作品とな...
[続きを読む](2014.07.01) -
1830年に生まれた革命的交響曲 幻想交響曲が完成したのは1830年のことである。ベートーヴェンが世を去ってから3年しか経っていないのに、ここまで奇想天外な交響曲がフランスから生まれたという事実には驚嘆するほかない。しかも作曲当時、エクトル・ベルリオーズは26歳だったのである。 作曲の原動力になったのは恋である。若手の登竜門とされるローマ賞に挑戦して落選した...
[続きを読む](2013.11.26) -
イギリス演劇史に名を残す名優、ジョン・ギールグッドが録音した『ハムレット』のレコードがある。何種類かあるようだが、私が持っているのは1957年に吹き込まれたもの。当時、ギールグッドは53歳。さすがに若々しさはないが、その音楽的な声(「絹にくるまれた銀のトランペット」と称えられた)を聞いていると、自然と『ハムレット』の世界に誘われる。ほかの俳優には模倣できな...
[続きを読む](2013.02.02) -
美貌と演技力に恵まれた女優は珍しくないが、ヴィヴィアン・リーほどその両方を驚くほど高い水準で備えていた女優は、古今東西見渡してもそうそういない。 ローレンス・オリヴィエは、1935年にヴィヴィアン・リーが出演した舞台『美徳の仮面』を観た時、その「魔法のような容貌」に魅せられつつ、「素晴らしい技巧をほとんど偶然のように見せかけることの出来る天才手品師の誇り」...
[続きを読む](2013.01.09) -
2012年は安部ヨリミの『スフィンクスは笑う』が復刻され、安部公房の「天使」が発見された年である。安部公房が亡くなったのは1993年のこと。訃報に接した当時、私は学生だった。同級生に安部公房の熱狂的ファンがいて、「どれだけ安部公房のことが好きか」という話を延々聞かされたのを昨日のことのように覚えている。 あれからもう20年も経つのか、と時間の隔たりにぞっと...
[続きを読む](2012.12.29)