「シューマン」と一致するもの
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若い頃のカルロ・マリア・ジュリーニについて、プロデューサーのウォルター・レッグは、「彼が最も必要としたものはレパートリーだった」と書いている。しかし、ジュリーニは限られたレパートリーでも特に不自由することなく、自分がきちんと理解している作品しか指揮せず、やがて誰もが認める巨匠となった。 人柄は誠実で、権力欲もなかった。ジュリーニが誰かとポストを争って蹴落...
[続きを読む](2020.08.02) -
「もし踊るなら、相手は伯爵夫人でなければ」 ワルツは4分の3拍子の舞曲で、18世紀後半に普及し始めた。語源はwal(t)zen(回る、回転する)ではないかと言われている。この舞曲が広まったのは、1815年、リーニュ公に「会議は踊る、されど進まず」と評されたウィーン会議からで、以後ヨーゼフ・ランナーやシュトラウス・ファミリーのワルツ曲が爆発的な人気を得た。 ...
[続きを読む](2020.07.03) -
ブラームスの「田園」 ブラームスの交響曲第2番は1877年に作曲され、同年12月30日に初演された。指揮者はハンス・リヒター、オーケストラはウィーン・フィルである。初演は大成功を収めた。以来、その人気の高さは変わっていない。ブラームスの交響曲は4作品あり、いずれも傑作だが、第2番が好きだという人は非常に多い。 完成までに20年以上かかった交響曲第1番とは対照...
[続きを読む](2019.12.03) -
劇的に、ロマンティックに かつて名ヴァイオリニストたちが盛んに作曲し、人気を博していた時代があった。古くはコレッリ、ヴィオッティ、タルティーニ、パガニーニ、シュポーア、19世紀生まれだと、ヴィエニャフスキ、サラサーテ、イザイ、エネスコなどの作品は、今でも演奏され、聴衆を魅了している。 1820年、ベルギーに生まれたアンリ・ヴュータンは、パガニーニやシュポーア...
[続きを読む](2019.08.10) -
スコット・ウォーカー『Scott Walker Sings Jacques Brel』1981年作品 ジェフ・バックリィの「ハレルヤ」、パティ・スミスの「ビコーズ・ザ・ナイト」、ザ・クラッシュの「アイ・フォウト・ザ・ロウ」、シネイド・オコナーの「ナッシング・コンペアーズ・トゥ・ユー」......。以上の曲はいずれも、ともするとオリジナルよりも有名なカヴァー・...
[続きを読む](2019.05.26) -
我が感謝を受けよ リヒャルト・シュトラウスが最初に出版した歌曲集は、ヘルマン・フォン・ギルムの詩に曲をつけた『8つの歌』である。作品番号は10。1885年、つまり21歳の時までに書かれたこの作品は、オペラや管弦楽を讃えられることの多いシュトラウスが、若い頃からリートの作曲家としても抜きん出た才能を持っていたことを今日に伝えている。 『8つの歌』は「献呈」「何...
[続きを読む](2018.09.14) -
ハンス・ロスバウトには現代音楽のマイスターというイメージがある。何しろ20世紀の重要作品であるシェーンベルクのオペラ『モーゼとアロン』、ブーレーズの「ル・マルトー・サン・メートル」、クセナキスの「メタスタシス」の世界初演を務めた人なのである。しかし、そのレパートリーは広い。端的に言えば、ラモーからシュトックハウゼンまで手中に収めているのだ。大半はヨーロッパ...
[続きを読む](2018.05.03) -
青春と哀愁のチェロ 広く知られているとは言い難い女性作曲家、ルイーゼ・アドルファ・ル・ボーは、1850年にドイツのラシュタットに生まれた。父親は軍人だったが音楽に造詣が深く、その影響もあって16歳の時に本格的に音楽の道を志し、10代でピアニストとしてデビュー、その後作曲を学び、1882年にコンクールで優勝してからは、ピアニスト、作曲家の二足のわらじを履き、さ...
[続きを読む](2018.02.07) -
アルフレッド・コルトーの演奏は、音楽作品の中に広がる詩的世界を開示する。間の取り方やペダリングが独特で、詩を書くようにピアノを弾いていると言いたくなるほどロマンティックで豊かな音楽性がそこに湧き出ている。解釈とアーティキュレーションに磨きをかけながらも、いざ指が鍵盤にふれるとなった時、きらめく感性が発現し、理屈をこえたところで五線譜の縄から解放された音楽が...
[続きを読む](2018.01.13) -
もう一人の巨人 ベートーヴェンの交響曲第4番は1806年に作曲され、1807年3月に初演された。かつてシューマンは、有名な第3番と第5番の間に生まれたこの作品を、「北欧の2人の巨人に挟まれた清楚可憐なギリシャの乙女」と呼んだ。美しい呼称である。しかし、第2楽章はともかく、全体的にはベートーヴェンらしい力強さと緊張感をたたえた力作で、その構成も(第5番以上とは...
[続きを読む](2017.05.29)