「プロコフィエフ」と一致するもの
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ジェラール・フィリップはいつの時代にも通用しそうな美貌に恵まれた二枚目であるだけでなく、舞台でも高い評価を得ていた演劇人であり、抜群の身体表現の能力と知性と品格と神秘性を備えたカリスマであった。そして何より柔軟性に富み、アクション史劇にも、ロマンティックな文芸映画にも、軽い喜劇にも、シリアスな現代ドラマにも嵌る名優であった。だからこそ、亡くなってから半世紀...
[続きを読む](2013.11.04) -
ロマンティックでモダニスティック プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番は、とびきり美しい旋律を持っているばかりでなく、攻撃性や先進性も兼ね備えた傑作である。ロマンティックでモダニスティック。プロコフィエフらしい異能の才気が迸り、かつて存在しなかったようなサウンドフォルムを形成している。 作曲時期は1917年から1921年。ロシア革命の年に着手され、日本を経由し...
[続きを読む](2013.10.31) -
「ジダーノフ批判」の時期に生まれた傑作 ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番は1947年夏から1948年3月24日の間に作曲された。この時期(1948年以降)、彼はいわゆる「ジダーノフ批判」にさらされていて、作品が演奏禁止になったり、教職を解かれたり、自己批判を強要されたりしていた。 「ジダーノフ批判」というのは、アンドレイ・ジダーノフ主導による言論...
[続きを読む](2013.06.10) -
キリル・コンドラシンの名前は、ダヴィッド・オイストラフやエミール・ギレリスといったソ連の名演奏家たちの協奏曲録音で知った。彼らの伴奏指揮者として必ずといっていいほどコンドラシンの名前が記されていたのである。そのため、私はしばらくの間、コンドラシンに対して「すぐれた伴奏指揮者」というイメージしか抱いていなかった。それが変わったのは、だいぶ経ってからのことであ...
[続きを読む](2012.08.05) -
フランコ・ゼフィレッリ版は、周知の通り大ヒットした人気作である。ロミオ役はレナード・ホワイティング、ジュリエット役はオリヴィア・ハッセー。カステラーニ版に心酔していた私は、黒髪のジュリエットには馴染めないと思い込んでいたが、あのニーノ・ロータの有名なメロディーが流れ始める頃には、無抵抗になり、オリヴィア・ハッセーのジュリエットを受け入れていた。シェントール...
[続きを読む](2012.05.18) -
美と歪み プロコフィエフは若い頃、斬新な作風で賛否両論を巻き起こし、注目を集めていた。ヴァイオリン協奏曲第1番は、そんな彼が青春期の最後に完成させた傑作である。作曲時期は1915年から1917年。初演は1917年11月に予定されていたが、ロシア革命のために流れてしまい、6年後の1923年10月18日、パリで行われた。指揮はセルゲイ・クーセヴィツキー、ソリスト...
[続きを読む](2012.04.26) -
クラシックの世界には天才と呼ばれる子供が多く存在する。「天才少年」や「天才少女」は決して珍しいものではない。程度の差はあるにしても、若いうちに天才であることを示さない音楽家が大人になってから急に天才になる例は、むしろ稀だ。ただ、場合によっては、「天才少年」や「天才少女」という言葉が極めて消極的な意味合いを持つことがある。彼らはしばしばハリウッドの天才子役た...
[続きを読む](2012.03.03) -
「プレチピタート」が描くもの セルゲイ・プロコフィエフは1939年から1944年の間にピアノ・ソナタを3作書き上げた。第6番イ長調、第7番変ロ長調、第8番変ロ長調である。戦争に触発されて書かれたそれらの作品は、まとめて「戦争ソナタ」と呼ばれている。このシリーズ中、プロコフィエフの才気が爆発しているのが第7番である。よりどころのない不安、甘さのないリリシズム、...
[続きを読む](2012.01.19) -
マリア・ユーディナはスターリンお気に入りのピアニストだった。彼女が録音したモーツァルトのピアノ協奏曲第23番は、スターリンの求めに応じて演奏されたものである。ただ、ユーディナは舌禍の多い人で、幾度となく当局とやり合っているような女傑だった。スターリンに対しても批判的な言動を繰り返していた。レコードの謝礼を受け取る時、彼女は礼状にこう書いたという。「ご助力を...
[続きを読む](2011.12.27) -
ギリシャが生んだ巨星、ディミトリ・ミトロプーロスが遺したレコードには凄絶な輝きがある。一度この指揮者の魅力にとりつかれたが最後、もう逃れられない。 生前のミトロプーロスは、人間離れした記憶力でどんな複雑な総譜も完全に暗譜し、作品の核をえぐり、オーケストラがそれまで出したことがないマグマのような音を奔出させ、聴き手を畏怖と緊張と興奮で縛りあげた。指揮棒は晩年...
[続きを読む](2011.03.10)