「モーツァルト」と一致するもの

  • 美しいメロディーがより美しくなる おなじみの作品が新鮮な魅力を放ったり、なじみのない作品が親しげに響いたとき、決して誇張ではなく、芸術の深い部分と調和したような気持ちになる。ペーター・マークはそういう感動を与える指揮者である。新鮮な魅力を放つといっても、それが単に奇を衒ったものなら二度聴けば飽きる。マークの指揮はそうではなく、独特の表現が全て音楽的に響くのだ...

    [続きを読む](2022.06.04)
  • 「彼女は心で歌うことを知っていた」 イルムガルト・ゼーフリートは、戦後のウィーンで活躍した「モーツァルト・アンサンブル」の一員である。オペラのみならず、リートやオラトリオでも高く評価されていた人で、かつて同じ舞台に立っていたエリザベート・シュヴァルツコップからは次のように賞賛されていた。「私たちは、皆、彼女のことを羨んでいました。私たちが苦心して身につけなけ...

    [続きを読む](2022.04.03)
  • 『フィガロの結婚』から「プラハ」へ モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」は1786年12月6日に完成し、1787年1月19日に作曲者自身の指揮によりプラハで初演された。当時、プラハでは歌劇『フィガロの結婚』が大流行し、モーツァルトは押しも押されぬ人気作曲家となっていた。初演は当然のごとく成功裡に終わり、後にモーツァルトが「幸せな一日だった」と回想するほど忘...

    [続きを読む](2022.02.05)
  • 才気煥発な音楽の化身 レナード・バーンスタインはアメリカが生んだ最初の世界的指揮者である。そのキャリアは華々しく、指揮者としてだけでなく、作曲家、ピアニスト、教育者としても大きな足跡を残した。派手な動きが多い指揮に関しては好き嫌いが分かれるが、そこから放たれる音楽の力は絶大なもので、多くの聴衆を魅了した。彼こそは才気煥発な音楽の化身、全身音楽家であった。 コ...

    [続きを読む](2022.01.04)
  • 協奏曲は軽快に、華麗に モーリス・ラヴェルのピアノ協奏曲は1929年から1931年にかけて作曲され、1932年1月14日、マルグリット・ロンの独奏により初演された。奇しくもラヴェルは1929年に「左手のためのピアノ協奏曲」を書くように依頼され、そちらの作曲も行っていた(完成したのは「左手」の方が早い)。これまでピアノ協奏曲を完成させたことのない作曲家が、晩年...

    [続きを読む](2021.09.03)
  • 美しい調和の音楽 モーツァルトのピアノ協奏曲第23番は美しい調和の音楽である。耳を傾けていると、世界の調和、感情の調和のなかにいるような心地を覚える。アンドレ・ジイドが日記に書いた「モーツァルトのよろこびは清らかに澄み渡っている。音楽のフレーズは、物静かな想いのようだ。その単純さは純粋さにほかならない」という言葉がそのまま当てはまる作品だ。明るいけど陽気すぎ...

    [続きを読む](2021.05.01)
  •  現代音楽を得意とする指揮者には、総じて知的でクールなイメージがある。彼らが古典派やロマン派の作品を振ると、大抵の場合、音楽の細かい構造が透けて見えるような演奏になる。もやもやしたものが取り除かれ、分かりにくいと感じていたものが分かりやすくなり、クリアーに全体像が見えてくるのだ。 もっとも、明晰で分かりやすい演奏というだけではじきに飽きが来る。我々が音楽に求...

    [続きを読む](2021.04.03)
  • 二十代のたくましい表現力 ベートーヴェンの交響曲とピアノ協奏曲は、第1番と第2番が古典派らしい優美さと明るさを持つ点で共通している。両作品ではこの作曲家の独創性はまだ表面化しておらず、第3番以降の作品よりも影が薄い。作風もアイディアも穏健で、激しい叫びも胸を潰すような重さもない。しかし、これらは旋律とリズムの力のみで勝負していた青春時代のたくましい表現力の結...

    [続きを読む](2021.03.03)
  • リヒテルのプロフィール 1955年、戦後初めて鉄のカーテンを越えて訪米したソ連のピアニスト、エミール・ギレリスは、各地でセンセーションを巻き起こし、絶賛された時、こう言ったという。「私のことを褒めるのは、リヒテルの演奏を聴くまで待ってください」ーーこれはギレリスの人柄を表すエピソードであり、2人の優劣を示すものではないが、この発言から西側におけるリヒテル伝説...

    [続きを読む](2021.01.08)
  • 世界で最も有名な小夜曲 モーツァルトの音楽の中でも特に有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、1787年に作曲された。完成したのは同年8月10日。つまり、キャリアの後期に書かれた作品である。 この名称は、モーツァルト自身が自作目録に記載したもので、日本語に訳すと「小夜曲」となる。もともとは5つの楽章で構成されていたようだが、何らかの理由でメヌエットの一...

    [続きを読む](2020.11.10)
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