「ワーグナー」と一致するもの
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スイス出身の大ピアニスト、エドウィン・フィッシャーの著書に『音楽の考察』というエッセイ集がある。邦訳もあり、『音楽を愛する友へ』と題されて新潮社から出ていた(1958年初版)。 フィッシャーはこの本の中で、演奏家の心得を述べ、「作曲家が作品を懐胎した時に彼が霊感を受けていた状態に、われわれ自身の身を置くこと」の大切さを説き、合理主義に傾いている音楽表現や音...
[続きを読む](2019.01.26) -
新しい交響曲の創始者 ハンス・ロットの交響曲第1番は、完成から100年以上演奏の機会に恵まれず、1989年にようやく初演された。ロットの名前はマーラーの伝記等にも載っているし、ブルックナーやマーラーがその才能を讃えた言葉も記録されている。誰も知らない作曲家だったわけではない。にもかかわらず、その代表作である交響曲第1番が人々の耳に届くまでにはあまりにも長い時...
[続きを読む](2018.10.13) -
サー・エイドリアン・ボールトはイギリスが生んだ大指揮者で、ホルストの『惑星』の非公式初演、ヴォーン・ウィリアムズの田園交響曲や交響曲第4番の初演を任された人物として知られている。世界最長の交響曲と言われるハヴァーガル・ブライアンの交響曲第1番「ゴシック」のプロ演奏家による正式初演で指揮を務め、成功に導いたのもボールトである。同時代のイギリス音楽を世に紹介し...
[続きを読む](2018.08.15) -
ハンス・ロスバウトには現代音楽のマイスターというイメージがある。何しろ20世紀の重要作品であるシェーンベルクのオペラ『モーゼとアロン』、ブーレーズの「ル・マルトー・サン・メートル」、クセナキスの「メタスタシス」の世界初演を務めた人なのである。しかし、そのレパートリーは広い。端的に言えば、ラモーからシュトックハウゼンまで手中に収めているのだ。大半はヨーロッパ...
[続きを読む](2018.05.03) -
青春と哀愁のチェロ 広く知られているとは言い難い女性作曲家、ルイーゼ・アドルファ・ル・ボーは、1850年にドイツのラシュタットに生まれた。父親は軍人だったが音楽に造詣が深く、その影響もあって16歳の時に本格的に音楽の道を志し、10代でピアニストとしてデビュー、その後作曲を学び、1882年にコンクールで優勝してからは、ピアニスト、作曲家の二足のわらじを履き、さ...
[続きを読む](2018.02.07) -
アルフレッド・コルトーの演奏は、音楽作品の中に広がる詩的世界を開示する。間の取り方やペダリングが独特で、詩を書くようにピアノを弾いていると言いたくなるほどロマンティックで豊かな音楽性がそこに湧き出ている。解釈とアーティキュレーションに磨きをかけながらも、いざ指が鍵盤にふれるとなった時、きらめく感性が発現し、理屈をこえたところで五線譜の縄から解放された音楽が...
[続きを読む](2018.01.13) -
エレノア・パーカー主演の『女囚の掟』(1950年)の原題は『Caged』。日本では未公開だったが、現在はDVD化されている。タイトル通り、檻の中の話だ。強盗の共犯で刑に服したマリー(エレノア・パーカー)は、刑務所内の慣習や上下関係の洗礼を受けるが、その過程で、看守ハーパー(ホープ・エマーソン)の暴虐ぶり、囚人間の覇権争い、自殺や殺人などが描かれる。やがて精...
[続きを読む](2017.11.27) -
ワルターと私 ブルーノ・ワルターはクラシック音楽を聴きはじめた人の前に、モーツァルトやベートーヴェンの作品の指揮者として現れる。そして、ライナーノーツやレビューに書かれている「温厚な人柄」「モラリスト」といった人物評により、大指揮者には稀な人格者のイメージを植え付けられる。これはワルター受容の一つのパターンと言えるだろう。しかし、そんな人物像を前提にして音源...
[続きを読む](2016.12.11) -
一回勝負に賭ける演奏 ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが没入を重んじた指揮者だったことは、遺された録音や映像に接すればすぐに分かる。その手記にも、集中と没頭なき芸術が「芸術全般の悲劇の始まり」であると書かれている。彼にとって、単に楽譜に忠実なだけの演奏は非創造的であり、個性的な審美観を振り回す指揮は疑わしいものであった。「私にとって重要なのは、魂に訴えるか否...
[続きを読む](2016.10.19) -
クレンペラーの音楽 木管を強調させるやり方は、クレンペラーが意識して行っていたことである。何しろ「木管がきこえるということがもっとも重要なのです」とまで言い切っているのだ。その傾向が昔からあったことは、1928年に録音されたR.シュトラウスの「7つのヴェールの踊り」を聴くとわかる。これは極めて貴重な音源だ。録音年代を忘れるほど音質が良いこともあり、ぞくぞくす...
[続きを読む](2016.03.21)