「絵」と一致するもの
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ブラック・サバス『パラノイド』1970年作品 本稿がアップされる頃には停戦に至っているよう切に願ってはいるが、ここ数週間、頭の中でグルグル流れ続けているのが、ブラック・サバスの「ウォー・ピッグズ」である。地響きのようなイントロに続いて空襲警報が鳴り響き、〈戦争のブタども〉、つまり人心を操って、破壊の限りを尽くす権力者を糾弾する、8分に及ぶ地獄絵だ。この曲を収...
[続きを読む](2022.03.21) -
パニック映画ブームのピーク 超高層ビルでの火災をリアルに描いた『タワーリング・インフェルノ』(1974年)は、1970年代に製作された数多くのパニック映画の中で最もヒットした作品である。ここにはパニック映画に必要なものが全てある。すなわち、大迫力のディザスター・シーン、豪華キャストたちの夢の共演、パニックを乗り越えるための冒険的な要素、そして人間ドラマとして...
[続きを読む](2021.10.12) -
豪華で大掛かりなパニック映画 1960年代後半、映画界はテレビの普及によって勢いを失っていた。アメリカン・ニューシネマが流行しても、それは老若男女が楽しめるものではなく、映画館入場者は減る一方だった。そんな時期に、かつての華やかなハリウッドを取り戻そうとばかりに大金を注ぎ込み、人気スターを集め、豪華なセットを組んで製作されたのが、パニック映画である。 パニッ...
[続きを読む](2021.08.10) -
天才絵師 みんなで示し合わせてこの時代を選び、集結したのではないか。そう思いたくなるほど、江戸の寛政・文化・文政期には、多くの天才絵師が活躍していた。ちょっと名前を挙げるだけでも、喜多川歌麿、葛飾北斎、写楽、歌川豊国、歌川国貞、歌川広重、歌川国芳とビッグネームが並ぶ。寛政3年(1791年)、武士の家に生まれ、狩野白珪斎と菊川英山に絵を学び、曲亭馬琴の『南総里...
[続きを読む](2021.07.10) -
天高く響き、地を揺るがす ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を聴いていると、不思議な気分になることがある。一体全体この巨大な音楽はどこから生まれてきたのだろうかと。作曲者から生まれたものだと言ってしまえばそれまでだが、彼がどういう気持ちで書いていたのか読めないのである。私はそこに一個人の喜怒哀楽や信仰心や創作意欲を超えた自然の意思のようなものを感じ...
[続きを読む](2021.06.02) -
本格的なスプラッター映画 マリオ・バーヴァが監督・脚本・撮影を務めた本格的なスプラッター映画である。1971年に公開され、多くのフォロワーを生んだこの先駆的作品は、残酷描写と映像美にあふれているだけでなく、ストーリーが巧みに構築されていることもあって、一個の作品として繰り返し鑑賞するにたえるクオリティを持っている。一人の殺人鬼が恐怖をもたらす展開ではなく、殺...
[続きを読む](2020.12.22) -
それまで平凡に暮らしていたのに、突然何か不条理なことと関わり、つい深入りしてしまい、人生の暗部に落ちる人がいる。デヴィッド・リンチ監督の映画『ブルー・ベルベット』(1986年)では、好奇心旺盛な青年ジェフリーがそういう目に遭う。 父親が病気になったため、実家に戻ってきた大学生のジェフリー(カイル・マクラクラン)は、ある日、野原で切り落とされた人間の耳を見つ...
[続きを読む](2020.12.02) -
吉村公三郎監督によると、初めて品川駅で「美しい少女」を見かけた時、「あんな娘が女優だったらなあ」と仕事仲間と語り合っていたという。その後、彼女が松竹大船撮影所でダンスを教えている先生だと知ると、吉村監督とスタッフたちは稽古場に押しかけ、映画に出演するよう口説いた。とはいえ、相手は素人である。演技指導のやり方は、「少し上を向いて、目線は数センチ下にして」と...
[続きを読む](2020.11.01) -
若い頃のカルロ・マリア・ジュリーニについて、プロデューサーのウォルター・レッグは、「彼が最も必要としたものはレパートリーだった」と書いている。しかし、ジュリーニは限られたレパートリーでも特に不自由することなく、自分がきちんと理解している作品しか指揮せず、やがて誰もが認める巨匠となった。 人柄は誠実で、権力欲もなかった。ジュリーニが誰かとポストを争って蹴落...
[続きを読む](2020.08.02) -
第3部 曲とスピーカーとの相性〜PMCのTB2+とtwenty5 22〜 次に、イギリスのメーカーPMCのTB2+である。特徴は、いわゆるモニター性能を最優先し、細密画のような描写力が画期的で素晴らしい。時間軸において恐ろしいほど正確で、音の立ち上がりが速く、「ザサッ ザサッ」と、音が切り込んでくるように感じられ、また、音源に色付けしないストレートな印象。...
[続きを読む](2020.05.24)