「J.S.バッハ」と一致するもの

  • 祝典音楽から交響曲へ 「ハフナー」は活力と躍動感にあふれた傑作である。明るい雰囲気が支配的で、陰翳もあるが暗さや切なさのなかに沈むことは全くない。音楽は輝きながら、迷いなく、勢いよく前進する。もともとは祝典のために書かれたという事情も大いに影響しているのだろう。 作曲の経緯はやや入り組んでいる。モーツァルトはまず1776年にザルツブルクのハフナー家の結婚式の...

    [続きを読む](2019.09.26)
  • 完璧な演奏 1917年10月27日、ロシアからアメリカへやって来た16歳のヤッシャ・ハイフェッツは、カーネギーホールで初リサイタルを行い、驚異的な成功を収めた。その信じがたいほど完璧な演奏は、当時客席にいた誰もがかつて耳にしたことがないもの、同業者が脅威を感じるレベルのものだったという。 以来、ハイフェッツの名は「完璧」と同義になり、やがて「ヴァイオリニスト...

    [続きを読む](2019.01.04)
  • 時空の概念を超える モーツァルトの全作品で、私がこれまでに一番多く聴いたのは「ジュピター」である。それは「最後の交響曲」に対して特別な気持ちが働くからでも、何か深遠なメッセージを読み取っているからでもない。聴いていると体が軽くなり、すぐに音楽の世界に入り込み、旋律とハーモニーに浸る悦びを味わえるからである。病気のときも、この音楽を聴くと楽になる。端的に言えば...

    [続きを読む](2017.01.23)
  • 問いかける音楽 人が一生をかけて一つでも完成させることができたら満足しそうな作品を、バッハは65年の生涯のうちにいくつも書いた。傑作を書くのに時間は関係ないと言う人もいるかもしれないが、バッハの場合は限度を超えている。4大宗教曲を書いただけでも、音楽史に名を残すのに十分なのに、さらに、多くのカンタータがあり、平均律クラヴィーア曲集やゴルトベルク変奏曲があり、...

    [続きを読む](2017.01.07)
  • クレンペラーの音楽 木管を強調させるやり方は、クレンペラーが意識して行っていたことである。何しろ「木管がきこえるということがもっとも重要なのです」とまで言い切っているのだ。その傾向が昔からあったことは、1928年に録音されたR.シュトラウスの「7つのヴェールの踊り」を聴くとわかる。これは極めて貴重な音源だ。録音年代を忘れるほど音質が良いこともあり、ぞくぞくす...

    [続きを読む](2016.03.21)
  •  アーリーン・オジェーの歌声は心を洗う光、雑念を消す光である。まさしく真の美声だ。普通の歌手なら中年にさしかかるあたりで声が重くなったり固くなったりして、高音の出し方にも力みが感じられるようになる。しかし、オジェーは表現の幅を広げることはあっても、気品と透明感のある美声を失うことはなかった。彼女はそのキャリアの中で、厳密な意味で「衰えない」という奇跡を積み重...

    [続きを読む](2015.10.23)
  • 音楽の冒険 J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」は、『クラヴィーア練習曲集』の第4部として1741年(1742年とも言われる)に出版された作品で、元々は「2段の手鍵盤をもつチェンバロのためのアリアとさまざまな変奏」と題されていた。「ゴルトベルク変奏曲」と呼ばれるようになったのは、ヨハン・ニコラウス・フォルケルが『バッハ小伝』の中で、あの有名なエピソードを伝...

    [続きを読む](2015.07.09)
  • チェロの聖典 チェロの聖典といわれるJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲は、ケーテンの宮廷楽長として活躍していた1720年頃に完成したとみられている。つまり、無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータが書かれたのとほぼ同時期である。自筆譜は今日に至るまで見つかっていない。 「1720年頃の作曲説」は、無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの自筆浄書譜に「通奏低音...

    [続きを読む](2014.05.21)
  • ザ・トイズ「ラヴァーズ・コンチェルト」(1965年/全米No.2) クラシック音楽が原曲になっているポップスは数多あるが、「ラヴァーズ・コンチェルト(A Lover's Concerto)」ほど原曲にまさるとも劣らぬ魅力を感じさせる曲を私は知らない。歌詞もアレンジも秀逸で、何度聴いても飽きることなく、草原に吹く風のようにみずみずしいフィーリングで胸を満たして...

    [続きを読む](2014.05.08)
  • 協奏曲の録音 ギレリスのピアニズムには確かな造形感があり、胸に響く重量感、輝かしいまでの明晰さがある。しかし、グリーグの『抒情小曲集』で聴くことが出来るしっとりとした味わいと甘美さ、プロコフィエフの「束の間の幻影」で聴くことが出来る胸のすくような跳躍感や諧謔的な表現の巧さもギレリスの特性である。 若い頃(1930年代から1940年代にかけて)の録音を聴くとテ...

    [続きを読む](2014.04.23)
  1 2 3 4