「ワーグナー」と一致するもの
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マーラーの影響 若い頃、オットー・クレンペラーはマーラーの交響曲第2番「復活」をピアノ用に編曲して暗譜で演奏し、作曲者に認められた。そして、そのとき書いてもらった推薦状のおかげで、プラハの歌劇場の指揮者になることができた。1907年のことである。「すぐれた音楽家クレンペラー氏をご推薦申し上げます。氏はまだ若年にもかかわらず、すでに経験豊かであり、指揮者の職に...
[続きを読む](2016.03.19) -
恋してはいけない美女に恋したファウストの悲劇 リリ・ブーランジェは女性として初めてローマ賞グランプリを獲得し、1918年に24歳の若さで亡くなった作曲家である。幼い頃から病弱だったようで、姉のナディアによると、「彼女は自分の寿命が短く、限られた時間しかないことを自覚していた。今こうしてそれを語る私たちよりも遥かに冷静に、自らの死を予知していた」という。 父エ...
[続きを読む](2016.02.25) -
聖金曜日に輝く聖杯 リヒャルト・ワーグナーの『パルジファル』は死の前年、1882年1月13日に完成され、7月26日にバイロイト音楽祭で初演された作品である。当初はバイロイト音楽祭のみで上演され、それ以外の場所での上演は禁じられていたが、1913年12月31日深夜に解禁され、世界各地で上演されるようになった。 ワーグナーがバイロイト以外での上演を望まなかったの...
[続きを読む](2015.09.23) -
美しきパノラマ ブルックナーの交響曲第6番は1879年9月に着手され、1881年9月3日に完成した。初演は1883年2月11日に行われたが、第2楽章と第3楽章が演奏されただけで、全曲が披露されたのは作曲家の死後、1899年2月26日のことである。その際、指揮を務めたのはグスタフ・マーラーだった。 1879年から1881年といえば、交響曲第4番「ロマンティック...
[続きを読む](2015.09.01) -
レパートリーの広さ ピエール・モントゥーについて書かれた文章を読むと、ロシア音楽が得意とか、ドイツ音楽が得意とか、母国フランスの音楽が最も得意とか、いろいろなことが書かれている。そこでいつも思う、「果たしてこの人に得意でない作品があったのだろうか」と。実際のところ、レパートリーが広かったことは、遺された音源が証明している。バッハからメシアンまで、時代にも国籍...
[続きを読む](2015.07.22) -
『悪の華』は1857年に出版された詩集である。シャルル・ボードレールは当時36歳。それまでにも小説、詩、評論を発表しており、ウジェーヌ・ドラクロワ、エドガー・アラン・ポーの賛美者として一部に知られる存在であったが、『悪の華』によりセンセーションを巻き起こし、後に「これより重要な詩人はいない」(ポール・ヴァレリー)と言われるほどの存在になった。詩人が世を去る...
[続きを読む](2015.03.07) -
相反する評価 ヘルベルト・フォン・カラヤン生誕100周年の折、仕事の関係で、私は可能限り伝記や評論に目を通した。この指揮者に関する資料は多すぎるほど多く存在する。賛美に徹したものもあれば、批判に徹したものもある。しかし、そこに記されている評価のポイントは大体において同じである。それを肯定するか否定するかの違いが溝を生んでいるのだ。その最大のポイントは、性格的...
[続きを読む](2014.10.02) -
音による表現のエッセンス アントン・ヴェーベルンの「弦楽四重奏のための5つの楽章」は1909年に作曲された。作品番号は5。アルノルト・シェーンベルクのもとで研鑽を積んでいた頃、オペラの作曲計画が頓挫した後に起こった創作意欲の爆発を示す傑作である。まだ20代半ばだったヴェーベルンはここで調性的な世界から離れ、音の配列、強弱、音響、そして演奏法を徹底的に吟味し、...
[続きを読む](2014.07.25) -
指揮者の中の王 アルトゥーロ・トスカニーニは19世紀後半から20世紀半ばにかけて君臨したイタリアの大指揮者である。彼の登場により指揮者の地位、オペラの上演スタイル、オーケストラの演奏表現の在り方は大きく変わった。かのオットー・クレンペラーが「指揮者の中の王」と呼ぶほどその影響力は絶大だった。トスカニーニは単に指揮棒を振るだけの人ではなく、音楽監督ないし芸術監...
[続きを読む](2014.07.08) -
陶酔の様式 ワンフレーズだけで聴き手を陶酔させる音楽がある。ギョーム・ルクーのヴァイオリン・ソナタはその最たる例で、冒頭の旋律が流れると心がとけそうになる。ゆるやかに下降して上昇するこのフレーズだけでルクーは音楽史に名を残したといっても過言ではない。それほどまでに美しい。 ギョーム・ルクーは24歳の若さで亡くなったベルギー出身の作曲家。1870年1月20日に...
[続きを読む](2014.06.27)