「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー」と一致するもの
-
愛のため、自由のために ベートーヴェンにとって初めてのオペラ作品『フィデリオ』は、1805年11月20日にアン・デア・ウィーン劇場で初演され、3日間で取りやめになった。「期待を完全に裏切る出来」(『デア・フライミューティゲ』1805年12月26日付)とまで書かれたが、当時ウィーンがフランス軍に占領され、裕福な音楽愛好家たちが疎開していたことや、聴衆の大半がド...
[続きを読む](2014.12.30) -
魅力的なライヴ音源 1975年に椎間板の大手術を受け、1978年に指揮台から落ちて脳卒中に見舞われた後は、健康状態の悪化やベルリン・フィルとの関係悪化(1981年に勃発した「ザビーネ・マイヤー事件」をきっかけに、カラヤンとオーケストラの間には大きな溝が生じた)に悩まされ、それを反映するかのように、統率力が以前よりも緩み、オーケストラの自発性を重んじる傾向が強...
[続きを読む](2014.10.04) -
指揮者の中の王 アルトゥーロ・トスカニーニは19世紀後半から20世紀半ばにかけて君臨したイタリアの大指揮者である。彼の登場により指揮者の地位、オペラの上演スタイル、オーケストラの演奏表現の在り方は大きく変わった。かのオットー・クレンペラーが「指揮者の中の王」と呼ぶほどその影響力は絶大だった。トスカニーニは単に指揮棒を振るだけの人ではなく、音楽監督ないし芸術監...
[続きを読む](2014.07.08) -
巧緻なるデフォルメ パウル・ヒンデミットの『ウェーバーの主題による交響的変容』は1943年8月に完成し、翌年1月にアルトゥール・ロジンスキ指揮のニューヨーク・フィルにより初演された。アメリカ時代、ヒンデミットは『キューピッドとプシュケ』、『エロディアード』、『シンフォニア・セレーナ』などを作曲しているが、それらの中で『ウェーバーの主題による交響的変容』は最も...
[続きを読む](2014.05.02) -
絵画的描写ではなく感情の表出 ベートーヴェンの交響曲の中で最も有名な作品のひとつである第6番は、1808年に書き上げられた。作曲時期は第5番とほぼ同じだが、第5番の大部分の作曲は1807年に行われ、第6番の方は1808年の初春〜夏にかけて集中的に書かれたとみられている。 構想自体はそれ以前から抱いていたようで、1803年から1804年にかけて使用していた「ラ...
[続きを読む](2014.03.28) -
死へと向かう愛 リヒャルト・ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』は1857年10月から1859年8月にかけて作曲された。台本は、ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクの叙事詩(12世紀頃)から得たインスピレーションをもとに、ワーグナー自身が書き上げた。トリスタン伝説をオペラにする計画は元々ロベルト・シューマンが練っていたが実現せず、その弟子カール・リッタ...
[続きを読む](2014.01.10) -
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリは、同じ作品を徹底的に繰り返し練習し、表現の細かい部分まで磨き上げ、精巧無比な技術と強靭な理性をもって感情の抑揚を統御し、コンサートや録音に臨んでいた。1971年にドイツ・グラモフォンと契約してからの一連の録音は、まさにそんなミケランジェリの美学の結晶といえる。そこには一回性の感情表現はなく、完璧なアーティキュレー...
[続きを読む](2013.10.04) -
巨人の創造物 交響曲第8番は1884年7月から1887年8月10日の間に作曲された。1884年といえば、ブルックナーが交響曲第7番で大成功をおさめ、キャリアの絶頂期を迎えた年である。彼は60歳になっていたが、その創作意欲は衰えることを知らず、ますます横溢していた。それは同年に完成した『テ・デウム』を聴いてもはっきりと分かるだろう。そして3年後、彼は生涯最大規...
[続きを読む](2013.09.16) -
至高の世界へと導く術 カール・シューリヒトは、作品の核に凝縮されている美質を腕力ではなく知の力で表へと引き出す達人だった。録音の際は、細かい書き込みをしたオーケストラのパート譜を一式抱えて臨んでいたようだが、その表現がトリビアリズムに陥ったり、頭でっかちになることはなかった。しばしば「淡々としている」とか「誇張がない」と評されるからといって、冷たいとか物足り...
[続きを読む](2013.07.17) -
歳月の重さと理念の重さ ヨハネス・ブラームスが交響曲第1番を完成させたのは1876年。「2台のピアノのためのソナタ」を交響曲に改作しようとして挫折したのが1855年頃なので、20年越しの念願成就ということになる。むろん、その間ずっと交響曲にかかりきりだったわけではないが、自らが世に出す最初の交響曲のことをブラームスはかなり重く考えていたようである。ベートーヴ...
[続きを読む](2013.07.01)