「カール・ベーム」と一致するもの

  • ウィーンのプリマドンナ セーナ・ユリナッチの歌声は、豊かで深みがあり、あたたかく、声域全体のトーンが安定している。そこには作品のエッセンスを聴き手の耳の奥、心の奥にまで確実に届ける恩寵のような力も備わっている。何度繰り返し聴いても飽きることのない声、安心してどっぷり浸ることが出来る声である。 1921年10月24日、ユリナッチは医師の娘としてトラヴニクに生ま...

    [続きを読む](2013.02.23)
  • モーツァルトの小さな宝石 ザルツブルクの宮廷音楽家として窮屈な思いをしながら働いていた1776年、モーツァルトは多くの機会音楽を作曲した。セレナード「セレナータ・ノットゥルナ」もその中のひとつである。作曲の動機は何なのか、誰のために書かれたのかは明らかにされていない。「セレナータ・ノットゥルナ」というのも、父レオポルトによってモーツァルトの自筆譜に書かれた名...

    [続きを読む](2013.01.28)
  • 高度な簡潔さ ハイドンの交響曲の中で、個人的に最も愛聴しているのは第88番ト長調「V字」である。有名な第94番ト長調「驚愕」、第100番ト長調「軍隊」、第101番ニ長調「時計」、第104番ニ長調「ロンドン」などもよく聴くが、「V字」にはハイドンの美質がきれいに無駄なく詰まっていて、聴きやすい。簡潔さの中に音楽的内容の充実度と自由度がある。非常に中毒性の高い作...

    [続きを読む](2012.12.20)
  • チェボターリの後継者 美貌と美声と才能に恵まれ、究極の才色兼備を体現した名歌手である。早世したマリア・チェボターリの正当な後継者といってもいい。その声は艶があって美しいだけでなく、清潔感があり、しかも聴き手の耳を威圧することなく、ホールの隅々にまで響くような浸透性を備えている。レガートのなめらかさも特筆もので、歌い口に気品がある。そして歌詞の世界を、理智的な...

    [続きを読む](2012.11.28)
  • 聴いてすぐそれと分かる声 かつてEMIのプロデューサー、ウォルター・レッグはマリア・カラスについてこのように評した。「カラスは、偉大なキャリアを築くための必要条件、聴いてすぐそれと分かる声の持ち主だった」 偉大な歌手の定義はいろいろあるだろうが、「聴いてすぐそれと分かる声」(an instantly recognizable voice)を所有していることが...

    [続きを読む](2012.09.20)
  • 恋人たちの学校 『コジ・ファン・トゥッテ』の作曲者には元々サリエリが予定されていた。しかし、サリエリが降りたため、モーツァルトに依頼が回ってきた。モーツァルトの書簡や妻コンスタンツェの証言によると、サリエリがモーツァルトに対して敵意と嫉妬を抱きはじめたのは、このオペラの初演(1790年1月26日)が成功を収めた時からだという。 ひと言でいえば不道徳なオペラで...

    [続きを読む](2012.03.13)
  • 数々の名盤 名指揮者と呼ばれる人で「ザ・グレイト」を録音(ライヴ録音も含む)していない人は、ほとんどいない。裏を返せば、それだけ指揮者にとって自分の個性、技術、工夫を投影しやすい作品なのだろう。私の手元にも50種近くのCDがあり、我ながらよくここまで集めたものだと呆れている。 中でも愛聴しているのは、以下の5種である。・ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮、...

    [続きを読む](2012.02.23)
  • 「傑作の森」からきこえてくる妙なる楽想 ベートーヴェンの人生の中で最も創作意欲が高潮していたのは、交響曲第3番「英雄」を書き上げた1804年から数年間だといわれている。この時期をロマン・ロランが「傑作の森」と呼んだのは周知の通りである。とくに30代後半に入った1806年のベートーヴェンの作曲活動は注目に値すべきもので、交響曲第4番、ピアノ協奏曲第4番、ヴァイ...

    [続きを読む](2012.01.09)
  • 青春のソング・ブック モーツァルトのオペラでまず有名なのは『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』。これらはモーツァルトの三大オペラと呼ばれている。が、メロディーメーカーとしての彼のセンスが最も意気盛んに爆発しているのは『後宮からの誘拐』である。このオペラの中に織り込まれた20曲あまりの歌は、どれも表情豊かで美しい旋律によって編まれており、ポピュラー...

    [続きを読む](2011.05.13)
  • ワルターからミンコフスキまで 名盤と呼ばれている録音は少なくない。長年、最高の「40番」とされてきたブルーノ・ワルター/コロンビア響の組み合わせを筆頭に、オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管、カール・ベーム/ウィーン・フィル、ヨーゼフ・カイルベルト/バイエルン放送交響楽団(ライヴ)などなど、どれも素晴らしい出来である。 ワルターならコロンビア響よりウィ...

    [続きを読む](2011.04.23)
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