「チャイコフスキー」と一致するもの
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2004年にグリゴリー・ソコロフのコンサート映像がDVD化された時、日本では知名度が高いとはいえないこの大ピアニストについて、私は次のように書いたことがある。「現在は西欧を中心にマイペースの活動を行ない、その名声はすでに不動の高みに達している。にもかかわらず、日本で目立つかたちで紹介される機会はなく、情報が増えない。はっきりいえばマイナー扱いされている節す...
[続きを読む](2013.04.16) -
オッテルローが遺した録音で最も有名なのは、ベルリオーズの「幻想交響曲」だろう。名盤といわれるレコードやCDがたくさんある作品だが、その中にあって1951年6月に録音されたオッテルロー盤は、ほかの指揮者と比べて遜色ないどころか、もう60年以上、ひときわ眩しく光っている。「幻想」を聴き込んでいる人ほど、オッテルローの聴かせ方のうまさに唸らされているようである。...
[続きを読む](2013.01.17) -
自分を押しつぶそうとする運命に抗して 最初に第6番「悲愴」を聴き、次に第5番を聴いて、それからしばらくして第4番を聴く。チャイコフスキーの交響曲を知る際、私だけでなく、おそらく多くの人がこの順番を辿っているのではないかと思う。圧倒的にポピュラーな第5番や第6番に比べると、第4番は同列に並べられるほど人気があるとはいえない。ただ、チャイコフスキーの交響曲を知れ...
[続きを読む](2012.08.20) -
キリル・コンドラシンの名前は、ダヴィッド・オイストラフやエミール・ギレリスといったソ連の名演奏家たちの協奏曲録音で知った。彼らの伴奏指揮者として必ずといっていいほどコンドラシンの名前が記されていたのである。そのため、私はしばらくの間、コンドラシンに対して「すぐれた伴奏指揮者」というイメージしか抱いていなかった。それが変わったのは、だいぶ経ってからのことであ...
[続きを読む](2012.08.05) -
クラシックの世界には天才と呼ばれる子供が多く存在する。「天才少年」や「天才少女」は決して珍しいものではない。程度の差はあるにしても、若いうちに天才であることを示さない音楽家が大人になってから急に天才になる例は、むしろ稀だ。ただ、場合によっては、「天才少年」や「天才少女」という言葉が極めて消極的な意味合いを持つことがある。彼らはしばしばハリウッドの天才子役た...
[続きを読む](2012.03.03) -
サラサーテのために サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番は、「ツィゴイネルワイゼン」の作曲者としても知られる名手パブロ・デ・サラサーテのために書かれた。ベートーヴェンがフランツ・クレメントのために、メンデルスゾーンがフェルディナンド・ダヴィッドのために、ブラームスがヨーゼフ・ヨアヒムのために、チャイコフスキーがレオポルト・アウアーのためにヴァイオリン協奏...
[続きを読む](2011.11.21) -
高校時代、下校途中に立ち寄った市立図書館の視聴覚室でこの指揮者の名前を知った。その時聴いたレコードはレイフ・ヴォーン・ウィリアムズの「トマス・タリスの主題による幻想曲」。知らない作品だった。たしか晩秋のことで、外では冷たい雨が降っていた。ヘッドフォンをして聴いている間、私は弦楽器の美しい響きにのみ込まれて鳥肌が止まらず、頭の中が痺れ、自分がどこにいるのか、...
[続きを読む](2011.11.09) -
イギリスが生んだ最もスキャンダラスな監督と言われるケン・ラッセル。彼は挑発的な作品を次々と発表し、世間を憤慨、驚倒させた背徳者であると同時に、極めて鋭く繊細な視覚と聴覚を持つ映像作家であり、音楽と映像をリンクさせる天才でもある。その非凡なセンスはBBC時代からすでに発揮されていた。例えば、ドキュメンタリー『エルガー ある作曲家の肖像』。淡々とした語り口であ...
[続きを読む](2011.08.18) -
アメリカで成功したロシアン・ピアノ・コンチェルト チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番といえば、あらゆるピアノ協奏曲の中で最も有名な作品ではないだろうか。冒頭でホルンが奏でる主題を聴いたことがないという人はおそらく一人もいないはずだ。いかにもロシア的なスケールの大きさを感じさせる名旋律である。序奏部のクライマックスで、グランドピアノとオーケストラが一体化して...
[続きを読む](2011.06.03) -
牢獄のような人生からの飛翔 今、カリンニコフの名前はどれくらい知られているのだろうか。同じ国のボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ、チャイコフスキー、ラフマニノフといった人たちに比べると、圧倒的に知名度は劣るし、作品の数自体も少ない。かといってマイナーな作曲家かというと、そうとも言えない。彼の代表作である交響曲第1番は、1897年の初演時から好...
[続きを読む](2011.05.21)