「ベートーヴェン」と一致するもの

  • ロマンティックか神経症か チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、1878年に作曲され、1881年12月4日にウィーンで初演された。作曲から初演までの経緯は、ピアノ協奏曲第1番と似ている。チャイコフスキーはこれをロシアの大演奏家レオポルト・アウアーに弾いてもらおうと考えていたが、アウアーに「演奏不可能だ」と突き返された。そこへ手を差し伸べたのがモスクワ音楽院...

    [続きを読む](2020.04.05)
  •  ジャック・ティボーのヴァイオリンは甘い音がする。 でもフレージングや強弱の付け方が洗練されているので、べたつかず、すっきりとした後味を残す。古臭いと言われがちなポルタメントやヴィブラートの奏法も上品で優雅、時に官能的な艶を帯び、聴き手を魅了する。 協奏曲を弾く時も、小品を弾く時も、ティボーの解釈には理屈っぽさがない。作曲家に対する大げさな構えも感じられな...

    [続きを読む](2020.03.13)
  • ブラームスの「田園」 ブラームスの交響曲第2番は1877年に作曲され、同年12月30日に初演された。指揮者はハンス・リヒター、オーケストラはウィーン・フィルである。初演は大成功を収めた。以来、その人気の高さは変わっていない。ブラームスの交響曲は4作品あり、いずれも傑作だが、第2番が好きだという人は非常に多い。 完成までに20年以上かかった交響曲第1番とは対照...

    [続きを読む](2019.12.03)
  •  エフゲニー・ムラヴィンスキーは1938年から1988年まで50年間、ソ連最高のオーケストラ、レニングラード・フィルの常任指揮者を務めていた。国を代表する一流のオーケストラに一人の指揮者がここまで長く君臨した例はまれである。 2003年に制作されたドキュメンタリーによると、楽団内には厳しい規律があり、団員が5分でも遅刻すると2週間の停職処分を受けたという。...

    [続きを読む](2019.11.01)
  • 遺書の後に ベートーヴェンが完成させたピアノ協奏曲は全部で5つあるが、短調を主調としているのは第3番のみである。 作品の構想が練られたのは1797年頃。1800年頃にほぼ作曲し終え、そこから手を加えて1803年に完成させたという。しかし一方で、1803年4月5日の初演を迎えるまで、ピアノ部分のスコアはほとんど書かれておらず、ベートーヴェンが即興で演奏したとい...

    [続きを読む](2019.09.03)
  • 天才探偵の登場 高木彬光のデビュー作『刺青殺人事件』で神津恭介が登場するタイミングは完璧だった。密室で他殺死体が見つかり、その後も残虐な殺人が続き、謎が謎を呼び、警察もお手上げ状態となり、ページ数も残すところ4分の1になろうかという時、この美貌の天才探偵が突然登場し、あっけなく密室の謎を解き、真犯人の正体を暴いたのだ。これ以上おいしい登場の仕方はない。謎解き...

    [続きを読む](2019.07.27)
  • 扉の向こうにある宇宙 ブルックナーの交響曲第5番は、緻密に構成された大曲で、骨組みは複雑ながらもがっちりとしている。第7番や第8番などに比べると硬質な感触があるが、その重たい鉄の扉を開けた向こう側に、我々を圧倒する音の世界が広がっている。傑作と評されながらも、とっつきにくいと言われることがあるのは、その扉を開けるのに少し時間がかかるからだ。 各楽章の主題の扱...

    [続きを読む](2019.06.04)
  •  ベートーヴェンの「月光」をアナトリー・ヴェデルニコフほど美しく奏でた人はほとんどいない。この格調高く、内省的な第1楽章を聴いていると、時間や空間の動きが止まって音楽だけがなめらかに流れているような気持ちにさせられる。テクニックは申し分ないが、機械的な冷たさはなく、わざとらしいアクセントもない。演奏者がただ者でないことはすぐに分かる。 かつて名教師・名ピア...

    [続きを読む](2019.05.10)
  • 名は体を表す ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番は1804年から1805年にかけて作曲されたとみられている。「熱情(Appassionata)」という題は作曲者の死後、ハンブルクの出版社クランツによって付けられたものだが、まさに熱情をそのまま音楽に置き換えたような作品なので、おそらく今日でも、この作品を初めて聴く人は、オブラートに包まれていない激しい感情...

    [続きを読む](2019.02.04)
  •  スイス出身の大ピアニスト、エドウィン・フィッシャーの著書に『音楽の考察』というエッセイ集がある。邦訳もあり、『音楽を愛する友へ』と題されて新潮社から出ていた(1958年初版)。 フィッシャーはこの本の中で、演奏家の心得を述べ、「作曲家が作品を懐胎した時に彼が霊感を受けていた状態に、われわれ自身の身を置くこと」の大切さを説き、合理主義に傾いている音楽表現や音...

    [続きを読む](2019.01.26)
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