「ベートーヴェン」と一致するもの

  • 青春と抒情 ガブリエル・フォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番は1875年から1876年にかけて作曲され、1877年1月27日に国民音楽協会の演奏会で、マリー・タヨーのヴァイオリンにより初演された。伴奏を務めたのは作曲者自身である。「期待を遥かに越える成功」(フォーレの言葉)を収めたこの初演の後、師であるサン=サーンスは、「子供が成長して自分の手元を離れてゆく...

    [続きを読む](2017.09.10)
  •  誰もが一度はダヴィッド・オイストラフの演奏に魅了される。緩急強弱の表現すべてが万全で、安定感があり、艶やかで美しい音色でも、鬼気迫る切れ味鋭い音色でも、翳りのあるメランコリーな音色でも、人をひきつける。どんなに一流と呼ばれる人でも、作品やその中にあるフレーズとの相性の良し悪しが出ることがしばしばあるが、オイストラフにかかると、そういうことはほとんど起こらな...

    [続きを読む](2017.07.08)
  • もう一人の巨人 ベートーヴェンの交響曲第4番は1806年に作曲され、1807年3月に初演された。かつてシューマンは、有名な第3番と第5番の間に生まれたこの作品を、「北欧の2人の巨人に挟まれた清楚可憐なギリシャの乙女」と呼んだ。美しい呼称である。しかし、第2楽章はともかく、全体的にはベートーヴェンらしい力強さと緊張感をたたえた力作で、その構成も(第5番以上とは...

    [続きを読む](2017.05.29)
  • 次の世代の作曲家として ベートーヴェンの交響曲第1番は、遅くとも1800年3月までに書かれ、同年4月2日に作曲者自身の指揮により初演された。30歳を迎える前にようやく最初の交響曲を完成させたわけだが、これが嚆矢となり、ベートーヴェンは30代の間に第2番から第6番「田園」まで書き上げることになる。 第1番の作風については、ハイドン、モーツァルトの影響から脱し切...

    [続きを読む](2017.05.12)
  • 短調の眠り アントニオ・ヴィヴァルディの『四季』は、1725年に出版された『和声と創意への試み』の中に収録されている最初の4曲、「春」「夏」「秋」「冬」を指す。それぞれの曲は、作者不明のソネットをもとにした一種の「標題音楽」で、春の喜び、夏のけだるさと激しい嵐、秋の収穫の祝いと狩猟、冬の寒さと暖炉がある室内での安らぎなどが描写される。 バロック期の標題音楽の...

    [続きを読む](2017.04.02)
  • ベートーヴェン弾きとして ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、モノラルとステレオの2種類ある。前者は1950年から1954年、後者は1959年から1969年にかけて録音された(「ハンマークラヴィーア・ソナタ」は除く)。演奏に関しては、モノラル盤の方が構築的である。ピアニッシモの美しい音色や聴き手に違和感を与えないアゴーギクの妙技も、神経質すぎない程度に磨か...

    [続きを読む](2017.03.13)
  • 何もかもが音楽的 ヴィルヘルム・バックハウスは「鍵盤の獅子王」と呼ばれたドイツのピアニストで、ベートーヴェンやブラームスを得意としていた。質実剛健、謹厳実直と言われることが多いが、その音楽性は決して堅苦しいものではなく、聴き手に息詰まるような緊張を強いるものでもない。むしろ、すぐれた音楽作品に封じ込められた神秘をあっさりと解き放ち、難解さやいかめしさとは異な...

    [続きを読む](2017.03.10)
  • ワルターと私 ブルーノ・ワルターはクラシック音楽を聴きはじめた人の前に、モーツァルトやベートーヴェンの作品の指揮者として現れる。そして、ライナーノーツやレビューに書かれている「温厚な人柄」「モラリスト」といった人物評により、大指揮者には稀な人格者のイメージを植え付けられる。これはワルター受容の一つのパターンと言えるだろう。しかし、そんな人物像を前提にして音源...

    [続きを読む](2016.12.11)
  • 変化と創造への意思 ベートーヴェンの交響曲第3番は1803年5月から1804年にかけて作曲された。公開初演日は1805年4月7日。作曲のきっかけは定かでないが、ベートーヴェンが完成した作品をナポレオン・ボナパルトに献呈するつもりでいたところ、皇帝に即位したニュースを聞いて失望したという逸話は有名だ。 第2番を作曲したのは1802年のことなので、この第3番の完...

    [続きを読む](2016.11.01)
  • 一回勝負に賭ける演奏 ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが没入を重んじた指揮者だったことは、遺された録音や映像に接すればすぐに分かる。その手記にも、集中と没頭なき芸術が「芸術全般の悲劇の始まり」であると書かれている。彼にとって、単に楽譜に忠実なだけの演奏は非創造的であり、個性的な審美観を振り回す指揮は疑わしいものであった。「私にとって重要なのは、魂に訴えるか否...

    [続きを読む](2016.10.19)
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