「絵」と一致するもの
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絵画的描写ではなく感情の表出 ベートーヴェンの交響曲の中で最も有名な作品のひとつである第6番は、1808年に書き上げられた。作曲時期は第5番とほぼ同じだが、第5番の大部分の作曲は1807年に行われ、第6番の方は1808年の初春〜夏にかけて集中的に書かれたとみられている。 構想自体はそれ以前から抱いていたようで、1803年から1804年にかけて使用していた「ラ...
[続きを読む](2014.03.28) -
礒田湖龍斎(いそだ・こりゅうさい)は鈴木春信の影響を強く受けながら、やがて独自の画風を示した絵師として知られている。もっとも、歌麿、北斎、広重のように誰もが知っているわけではなく、研究書と呼べるものはほとんどないし、日本で湖龍斎展が開かれたという話も聞かない。ただ、代表作の「雛形若菜の初模様」シリーズがテレビ番組で取り上げられたこともあり、湖龍斎に関心を持...
[続きを読む](2014.03.01) -
完璧主義者の美学 スタンリー・キューブリックの映画は、時代の制約を超えたところに存在している。 どんな巨匠が撮った傑作でも、それが作られた時代のモラルや技術等の制約と無縁ではあり得ない。「昔の作品だから、こういう表現にならざるを得なかったのだろう」とか「今ほど技術が発達していなかったから、ここまでが限界だったのだろう」といった感想を抱かせるものが大半である。...
[続きを読む](2014.01.14) -
年に1回は必ず読む漫画がある。楳図かずおの『わたしは真悟』だ。初めて読んだ時は頭が爆発しそうになるほどの興奮を覚えたものだが、何回読んでも、ほとんど同じ強度の興奮に襲われる。読み慣れた作品という印象を抱くことはない。毎回新鮮な気持ちになり、楳図が創造した驚異的な世界に溺れてしまう。 『わたしは真悟』は1982年から1986年にかけて『ビッグコミックスピリッ...
[続きを読む](2013.11.09) -
教員志望の同級生に誘われて、塾講師をしていたことがある。1994年4月から1996年3月までの約2年間の話だ。 中学2年生と中学3年生の国語のクラスを受け持っていた。生徒は各16名。授業時間は90分で、1日2コマ。時給は2600円、辞めた時は2900円だった。当時住んでいたアパートから車で50分という遠い場所にあったが、ちょっとした夕食付きだったこともあり...
[続きを読む](2013.08.10) -
『赤い手のグッピー』の潔癖性 戦時下のフランスで本格的に監督デビューし、大きな注目を集めた天才といえば、ほかにロベール・ブレッソンとアンリ=ジョルジュ・クルーゾーがいる。21世紀の今日に至るまでのフランス映画史を見渡しても、際立って個性的かつ異常な才能を持つ3人がほぼ同時期に世に出てきた、というのは興味深い。その中で、ベッケルは「犯罪映画」を得意にしながらも...
[続きを読む](2013.07.31) -
そこは、〈都会のオアシス〉などという陳腐な言葉に置き換えるのが憚られるほど、幽玄で心地好い静寂に包まれた空間。行く度に身も心もゆったりとした気分に浸れ、なおかつ極上の美術品を鑑賞したという満足感にも包まれて、終いにはその場にいつまでもいつまでも佇んでしまいたくなる。筆者が最も愛する美術館のひとつ、根津美術館(以下、根津美)とは、そうした場所だ。 手持ちの『...
[続きを読む](2013.04.06) -
美貌と演技力に恵まれた女優は珍しくないが、ヴィヴィアン・リーほどその両方を驚くほど高い水準で備えていた女優は、古今東西見渡してもそうそういない。 ローレンス・オリヴィエは、1935年にヴィヴィアン・リーが出演した舞台『美徳の仮面』を観た時、その「魔法のような容貌」に魅せられつつ、「素晴らしい技巧をほとんど偶然のように見せかけることの出来る天才手品師の誇り」...
[続きを読む](2013.01.09) -
2012年は安部ヨリミの『スフィンクスは笑う』が復刻され、安部公房の「天使」が発見された年である。安部公房が亡くなったのは1993年のこと。訃報に接した当時、私は学生だった。同級生に安部公房の熱狂的ファンがいて、「どれだけ安部公房のことが好きか」という話を延々聞かされたのを昨日のことのように覚えている。 あれからもう20年も経つのか、と時間の隔たりにぞっと...
[続きを読む](2012.12.29) -
楽曲のことに関しては、なんだかんだいっても、つんく♂の裁量がユニークな磁場を生んでいる。少なくともモーニング娘。に対する総合的な印象として、そのように見える。ただ、それ以外のことでは、彼のコメントやジャッジにハラハラさせられることが少なくない。プロデューサーの中には、ミスジャッジをしたりトラブルを招いたりしても、全て計算であるかのように思われるタイプがいる...
[続きを読む](2012.12.15)