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  • 練習魔 天才のなかには練習嫌いが少なからずいるが、ルドルフ・ゼルキンは練習魔で、毎日何時間もピアノに向かっていた。まず非常に遅いテンポでスケール練習を行い、時間をかけて徐々にテンポを速め、最終的に最速で弾くのがお決まりだった。何度も演奏したことがある曲でも、手を抜かずに練習をくり返した。それはもはや練習というより、音楽に奉仕する儀式だったのかもしれない。グレ...

    [続きを読む](2023.02.04)
  • フランス語で「Pathétique」 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」は、1797年から1798年の間に作曲され、1799年に出版された。作曲者がまだ20代の頃の作品である。標題は原語で「Grande Sonate pathétique」、つまり正確には「大ソナタ悲愴」となる。ベートーヴェンのピアノ・ソナタには「月光」、「テンペスト」、「ワルトシ...

    [続きを読む](2022.03.05)
  • ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 100選 その4コル・デ・フロートウィレム・ファン・オッテルロー指揮ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団1953年録音ピアノの音には重みがあるが、デュナーミクやアゴーギクに変な癖がなく、語り口は比較的なめらか。技巧も冴えている。両端楽章のヴァイオリンはきびきびしていて清洌だが、低弦の重みもしっかりと伝わってくる。オッテ...

    [続きを読む](2017.12.20)
  • 難易度の高さだけでなく グレン・プラスキンの『ホロヴィッツ』に、この作品に関する興味深いエピソードが載っている。それによると、ウラディミール・ホロヴィッツは20代の頃、セルゲイ・ラフマニノフのことを「若い私にとっての音楽の神様」と呼び、渡米時に会う機会を得たいと熱望していたという。一方、ラフマニノフもホロヴィッツの噂を聞き、興味を示していた。そして、1928...

    [続きを読む](2016.02.02)
  • 衰えることを知らぬ人 演奏技術について語るとき、昔より今の方が格段に進歩しているとか、水準が上がっているという言い方をする人をよく見かける。しかし、全体の平均値が上がっても、突出した存在が現れるとは限らない。その証拠に、ナタン・ミルシテインやウラディミール・ホロヴィッツに匹敵するようなヴィルトゥオーゾは、ほとんど現代に存在しない。才能は平等なものではなく、分...

    [続きを読む](2015.03.20)
  • 指揮者の中の王 アルトゥーロ・トスカニーニは19世紀後半から20世紀半ばにかけて君臨したイタリアの大指揮者である。彼の登場により指揮者の地位、オペラの上演スタイル、オーケストラの演奏表現の在り方は大きく変わった。かのオットー・クレンペラーが「指揮者の中の王」と呼ぶほどその影響力は絶大だった。トスカニーニは単に指揮棒を振るだけの人ではなく、音楽監督ないし芸術監...

    [続きを読む](2014.07.08)
  •  夭折した天才は何かにつけ悲劇の主人公のように語られがちである。ウィリアム・カペルも例外ではない。不気味なエピソードも彼の人生に深刻な悲劇性を付与している。それは、彼がユージン・リストと共に占い師に運勢をみてもらったという話。その時、彼はこういわれた。「彗星のような経歴だろうが、真に望むものは手に入らない。そして30歳前に衝撃的な死をとげるだろう」ーーこの占...

    [続きを読む](2012.01.30)
  • アメリカで成功したロシアン・ピアノ・コンチェルト チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番といえば、あらゆるピアノ協奏曲の中で最も有名な作品ではないだろうか。冒頭でホルンが奏でる主題を聴いたことがないという人はおそらく一人もいないはずだ。いかにもロシア的なスケールの大きさを感じさせる名旋律である。序奏部のクライマックスで、グランドピアノとオーケストラが一体化して...

    [続きを読む](2011.06.03)
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