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  • フランス語で「Pathétique」 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」は、1797年から1798年の間に作曲され、1799年に出版された。作曲者がまだ20代の頃の作品である。標題は原語で「Grande Sonate pathétique」、つまり正確には「大ソナタ悲愴」となる。ベートーヴェンのピアノ・ソナタには「月光」、「テンペスト」、「ワルトシ...

    [続きを読む](2022.03.05)
  •  1951年、エリザベート王妃国際音楽コンクールの開催が決まった際、ソ連政府の役人はスターリンから「必ず優勝を」と命令された。困った彼らは、国際コンクールでの優勝経験がある大演奏家ダヴィッド・オイストラフに相談した。「ソ連のヴァイオリニストの中で、誰なら優勝できるのか?」オイストラフは答えた。「レオニード・コーガンしかいない」――こうして当時27歳だったコー...

    [続きを読む](2021.08.01)
  • リヒテルのプロフィール 1955年、戦後初めて鉄のカーテンを越えて訪米したソ連のピアニスト、エミール・ギレリスは、各地でセンセーションを巻き起こし、絶賛された時、こう言ったという。「私のことを褒めるのは、リヒテルの演奏を聴くまで待ってください」ーーこれはギレリスの人柄を表すエピソードであり、2人の優劣を示すものではないが、この発言から西側におけるリヒテル伝説...

    [続きを読む](2021.01.08)
  •  一つのオーケストラの真価を知らしめるには一人の名指揮者の存在が不可欠である。すぐれた指揮者がいて、素晴らしい公演が実現してこそ、その評価は高まり、名実共に一流オーケストラとなるのだ。レコードだけでは「録音技術の魔術でうまく聞こえるのだろう」などと言われかねない。 では、いわゆる世界三大オーケストラはどうだったのか。むろん彼らにも、来日して圧倒的な演奏を披...

    [続きを読む](2020.09.03)
  • 遺書の後に ベートーヴェンが完成させたピアノ協奏曲は全部で5つあるが、短調を主調としているのは第3番のみである。 作品の構想が練られたのは1797年頃。1800年頃にほぼ作曲し終え、そこから手を加えて1803年に完成させたという。しかし一方で、1803年4月5日の初演を迎えるまで、ピアノ部分のスコアはほとんど書かれておらず、ベートーヴェンが即興で演奏したとい...

    [続きを読む](2019.09.03)
  •  ベートーヴェンの「月光」をアナトリー・ヴェデルニコフほど美しく奏でた人はほとんどいない。この格調高く、内省的な第1楽章を聴いていると、時間や空間の動きが止まって音楽だけがなめらかに流れているような気持ちにさせられる。テクニックは申し分ないが、機械的な冷たさはなく、わざとらしいアクセントもない。演奏者がただ者でないことはすぐに分かる。 かつて名教師・名ピア...

    [続きを読む](2019.05.10)
  • 名は体を表す ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番は1804年から1805年にかけて作曲されたとみられている。「熱情(Appassionata)」という題は作曲者の死後、ハンブルクの出版社クランツによって付けられたものだが、まさに熱情をそのまま音楽に置き換えたような作品なので、おそらく今日でも、この作品を初めて聴く人は、オブラートに包まれていない激しい感情...

    [続きを読む](2019.02.04)
  • ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 100選 その2ミンドゥル・カッツサー・ジョン・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団1959年録音カッツはルーマニアのピアニスト。正統派のピアニズムで、奇をてらうことはない。第1楽章のピアノの演奏は毅然としていて、勢いもある。分散和音の表現にも清冽さが感じられる。が、オーケストラの響きは(私が聴いたレコードの音質が貧弱なせ...

    [続きを読む](2017.12.16)
  • 「皇帝」と呼ばれる協奏曲 ベートーヴェンが完成させた最後の協奏曲である。作曲年は1809年。いわゆる「傑作の森」の時期に書かれた大作で、「皇帝」の異名にふさわしいスケールと風格を備えているが、これは作曲家自身による命名ではなく、出版人のJ.B.クラマーによるものである。作品はルドルフ大公に献呈された。 1809年といえば、ウィーンがフランス軍に占領されていた...

    [続きを読む](2017.12.05)
  • ベートーヴェン弾きとして ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、モノラルとステレオの2種類ある。前者は1950年から1954年、後者は1959年から1969年にかけて録音された(「ハンマークラヴィーア・ソナタ」は除く)。演奏に関しては、モノラル盤の方が構築的である。ピアニッシモの美しい音色や聴き手に違和感を与えないアゴーギクの妙技も、神経質すぎない程度に磨か...

    [続きを読む](2017.03.13)
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