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ジャン・ドラノワは「トリスタンとイゾルデ」の伝説を現代によみがえらせた『悲恋』(1943年)の監督である。この映画は大ヒットし、脚本を手がけたジャン・コクトーは、「ドラノワがいなければ私はどうなっていたことか...」と書いて当時35歳の若き才能を称えた。これにより一流監督の仲間入りを果たしたドラノワは、『しのび泣き』(1945年)、『田園交響楽』(194...
[続きを読む](2020.04.16) -
1920年生まれの監督 ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール主演の『ヘッドライト』(1956年)は、初老のトラック運転手と若いウェイトレスの悲恋物語で、溢れる詩情と哀感が胸を打つ傑作だ。アルヌールのファンには、ただでさえ魅力的な彼女のことをたまらなく愛おしく見せる作品として記憶されている。涙や溜息でじめじめしそうな題材だが、過剰な表現をせず、変にベタ...
[続きを読む](2019.07.13) -
猫のような雰囲気を持つ女優というと、フランソワーズ・アルヌールやブリジット・バルドー、あるいはもっと後年のナスターシャ・キンスキーあたりが思い浮かぶ。彼女たちに共通しているのは、男を虜にする性的魅力の持ち主であることだろう。この系譜の元祖が誰になるのかは分からないが、1930年代に登場した一人の女優を避けてさかのぼることはできない。彼女の名前はシモーヌ・...
[続きを読む](2019.05.21) -
1934年にジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『白き処女地』『地の果てを行く』で注目されてから、1976年に72歳で亡くなるまで、ジャン・ギャバンほどフランスで愛された俳優はいない。彼がカメラの前に立つと、それだけで周囲のキャストは霞んでしまう。例えば『地下室のメロディ』。あの大スター、アラン・ドロンでさえギャバンと並んで立っていると青二才に見える。ドロンよ...
[続きを読む](2011.05.20) -
「フランス映画=アンハッピーエンド」のイメージが日本で定着したのは1930年代のことである。そのアンハッピーなフランス映画の代表的な監督として人気を博していたのがジュリアン・デュヴィヴィエだ。人生に疲れを感じた時、その作品は強いお酒のように胸にしみる。 デュヴィヴィエはジャン・ギャバンを育てた人でもある。このコンビは、日本でいえば黒澤明と三船敏郎のようなも...
[続きを読む](2011.05.05) -
世の中には、目が合っただけで男の心を乱し、「俺に気があるんじゃないのか」と思わせてしまう女がいる。アルヌールは、まさにそういう女優である。しかも、それをスクリーン越しにやってしまうのである。 ツンと澄ました感じがなく、ド迫力ボディのグラマーでもなく、「わたしは金のかかる女です」と言わんばかりのセレブなムードを漂わせてもいない。親しみやすいけれど少し陰があり...
[続きを読む](2011.03.19)