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  •  フランスの思想家ジョゼフ・ド・メーストルは、社会の秩序のためには刑吏(処刑人)の存在が不可欠であると考えていた。「あらゆる偉大さ、あらゆる権勢、あらゆる従属は、〈刑吏〉に基礎をおいている。彼は人間社会の恐怖であり、また、その鎖なのである。世界からこの不可解な存在を取り除いてみるがよい。たちどころに、秩序は混乱たる状態にかわり、王座はくつがえり、社会は消える...

    [続きを読む](2019.10.27)
  •  「時こそが神なのではないかという考えに、ぼくは常に執着していた」とはロシア出身の詩人ヨシフ・ブロツキーの『ヴェネツィア 水の迷宮の夢』に記された言葉である。 時こそが神である。その前提で戯曲『大理石』を読むと、「おれたちにとってただ一人の観客は、時間なんだ」や「自分を時間に似せたいと本当に思っている」といった台詞に深い意味が加わる。劇の最後に、登場人物のト...

    [続きを読む](2018.10.20)
  • 流転のリアリティ 端折った作品といえば、ロシアに漂着した元禄商人・伝兵衛を描いた長編『異郷』(1943年9月)も同様である。これは織田作之助が想像力を自在にめぐらせた二部構成の大河ロマンで、第一部では伝兵衛がイギリス人との決闘で勇者になり、ペテルブルク一番の美女ナターシャが伝兵衛への恋に懊悩する。この展開はいかにも大衆好みだ。彼が日本人として常に恥ずかしくな...

    [続きを読む](2015.05.23)
  • 生活のリアリティ 織田作之助は19歳の時、三高の『嶽水会雑誌』に発表した初の評論「シング劇に関する雑稿」の中で、「単なる観念でも、象徴でもない、リアリティとは、我々の認識せるものの姿である。これを表現するところにリアリズムの頂点がある」と書いている。この考えは織田が常に意識していた汎用的指針であり、登場人物の思想や信条よりも生活について細かく書くのは、彼にと...

    [続きを読む](2015.05.16)
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