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哲学書と音楽 交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は1896年2月から8月にかけて作曲され、同年11月27日、作曲者自身の指揮により初演が行われた。『ツァラトゥストラはかく語りき』とはドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの代表作(1883年〜1885年)であり、ツァラトゥストラはゾロアスター教の開祖と言われる古代アーリア人である。ニーチェはこの人物を主人公...
[続きを読む](2024.11.01) -
孤独と不安をこえて シューベルトのピアノ三重奏曲第2番は1827年11月に着手された。完成時期と初演日ははっきりしない。1827年12月26日に初演されたという説もあるが、間違いなく演奏されたのは1828年3月26日の自作演奏会においてである。そのときは好評をもって迎えられたという。 シューベルトは1828年11月19日に31歳で亡くなった。なので、1827...
[続きを読む](2022.08.05) -
現代音楽を得意とする指揮者には、総じて知的でクールなイメージがある。彼らが古典派やロマン派の作品を振ると、大抵の場合、音楽の細かい構造が透けて見えるような演奏になる。もやもやしたものが取り除かれ、分かりにくいと感じていたものが分かりやすくなり、クリアーに全体像が見えてくるのだ。 もっとも、明晰で分かりやすい演奏というだけではじきに飽きが来る。我々が音楽に求...
[続きを読む](2021.04.03) -
1940年代のイギリス映画界で、ジェームズ・メイスンは絶対的なカリスマであった。屈折した性格の役が似合い、陰のある悪役を演じても、エキセントリックな変質者を演じても、正義の看板を背負った登場人物たちより魅力を発散して、観る者に肩入れさせる。なめらかで艶のある声、ニヒルな笑み、ノーブルな物腰を武器に、主導権をとってしまうのだ。危険と言えば危険な魅力である。 ...
[続きを読む](2015.05.09) -
『アイズ ワイド シャット』について 『アイズ ワイド シャット』は当時結婚していたトム・クルーズ、ニコール・キッドマンを起用したR-18指定作品で、キューブリックの遺作である。舞台は宇宙、無人ホテル、戦場といった極限的なものではなく、日常の世界だ。その日常の死角にある陥穽にはまり、一人の男が悪夢を体験する。 主人公ビル(トム・クルーズ)は腕利きの医者で、美...
[続きを読む](2014.01.16) -
完璧主義者の美学 スタンリー・キューブリックの映画は、時代の制約を超えたところに存在している。 どんな巨匠が撮った傑作でも、それが作られた時代のモラルや技術等の制約と無縁ではあり得ない。「昔の作品だから、こういう表現にならざるを得なかったのだろう」とか「今ほど技術が発達していなかったから、ここまでが限界だったのだろう」といった感想を抱かせるものが大半である。...
[続きを読む](2014.01.14)