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自由であり、孤独である シューベルトは31年の短い生涯の間に多くの曲を書いた。断片や消失したものも含めると、その数は1000曲以上に及ぶ。晩年は創作意欲が衰えるどころかますます盛んになり、傑作を次々と生み出した。 晩年のシューベルトをつき動かしたものが何かはわからないが、ベートーヴェンの死(1827年3月)は一つの契機となったかもしれない。かつて、「ベートー...
[続きを読む](2024.08.05) -
啓示的に響くコラール セザール・フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」は1884年に作曲され、1885年1月24日もしくは25日にマリー・ポアトヴァンによって初演された。フランクは若い頃ピアニストとして才能を開花させ、ピアノ曲も書いていたが、25歳の時(1847年)にオルガニストに転向した。それからは他の楽器のために書いた作品をピアノ用に編曲することはあっ...
[続きを読む](2022.12.04) -
交響詩のような協奏曲 フランツ・リストのピアノ協奏曲第2番は1839年に作曲され、同年9月13日に完成した。ただ、そのまま初演されたわけではない。何度も手を加え、1848年に「交響的協奏曲」と命名し、1849年にいったん改訂を終了。それでも納得が行かず、さらに1856年に補筆し、ようやく1857年1月7日に初演された。その後もリストは手直しを続け、1863年...
[続きを読む](2022.07.04) -
リヒテルのプロフィール 1955年、戦後初めて鉄のカーテンを越えて訪米したソ連のピアニスト、エミール・ギレリスは、各地でセンセーションを巻き起こし、絶賛された時、こう言ったという。「私のことを褒めるのは、リヒテルの演奏を聴くまで待ってください」ーーこれはギレリスの人柄を表すエピソードであり、2人の優劣を示すものではないが、この発言から西側におけるリヒテル伝説...
[続きを読む](2021.01.08) -
ベートーヴェンの「月光」をアナトリー・ヴェデルニコフほど美しく奏でた人はほとんどいない。この格調高く、内省的な第1楽章を聴いていると、時間や空間の動きが止まって音楽だけがなめらかに流れているような気持ちにさせられる。テクニックは申し分ないが、機械的な冷たさはなく、わざとらしいアクセントもない。演奏者がただ者でないことはすぐに分かる。 かつて名教師・名ピア...
[続きを読む](2019.05.10) -
名は体を表す ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番は1804年から1805年にかけて作曲されたとみられている。「熱情(Appassionata)」という題は作曲者の死後、ハンブルクの出版社クランツによって付けられたものだが、まさに熱情をそのまま音楽に置き換えたような作品なので、おそらく今日でも、この作品を初めて聴く人は、オブラートに包まれていない激しい感情...
[続きを読む](2019.02.04) -
誰もが一度はダヴィッド・オイストラフの演奏に魅了される。緩急強弱の表現すべてが万全で、安定感があり、艶やかで美しい音色でも、鬼気迫る切れ味鋭い音色でも、翳りのあるメランコリーな音色でも、人をひきつける。どんなに一流と呼ばれる人でも、作品やその中にあるフレーズとの相性の良し悪しが出ることがしばしばあるが、オイストラフにかかると、そういうことはほとんど起こらな...
[続きを読む](2017.07.08) -
ギレリスのプロフィール エミール・ギレリスは多面的な魅力を持ったピアニストである。かつては「鋼鉄のタッチ」と評され、それが彼のイメージを狭めていた節もあるが、遺された多くの録音に虚心坦懐に耳を傾ければ、強靭で決然たる打鍵や猛烈な疾走感だけでなく、音色の美しさやフレージングの柔らかさも持ち味であることが分かるはずだ。 若い頃からギレリスの技術は大きな注目の的と...
[続きを読む](2014.04.21) -
20世紀最初のロマンティック・コンチェルト 1897年3月に初演された交響曲第1番が大失敗に終わった後、ラフマニノフが強度の神経衰弱に襲われ、スランプに陥ったことはよく知られている。作曲への自信を失い、創作意欲も失った彼は、様々な治療法を試してみたものの、結局、何の効果も得られなかった。 転機が訪れたのは1900年。友人のすすめでニコライ・ダーリ博士の暗示療...
[続きを読む](2013.05.22) -
シューベルトやムソルグスキーにもつながる宇宙 『ディアベリの主題による33の変奏曲』、略して『ディアベリ変奏曲』は、1823年に出版されたピアノ作品で、J.S.バッハの『ゴールドベルク変奏曲』と共に、変奏曲史上の最高傑作といわれている。原題は〈33 Veränderungen über einen Walzer von A.Diabelli〉。意図的に〈Ve...
[続きを読む](2013.05.01)