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情熱に満ちた交響的幻想曲 シューマンの交響曲第4番は1841年に作曲され、同年9月13日、妻クララの誕生日に贈られた。初演は同年12月6日、ライプツィヒのゲヴァントハウスで行われたが、期待していたような評価を得られず、楽譜の出版も見送られた。その後、1851年に改訂を開始。1853年12月30日に改訂稿の初演がデュッセルドルフで行われ、成功を収めた。 異名は...
[続きを読む](2023.10.04) -
自分の好きな作品を紹介し、おすすめの演奏を挙げる時、ルドルフ・ケンペの名前を出していることが少なくない。若い頃は極度の激しさ、奈落の底の暗さ、えぐるような鋭さを求めがちで、過剰な表現に走らないケンペに惹かれることは稀だったが、心身を満たす充実感を味わいたいという気持ちが強くなっている今、何度も聴きたくなる演奏となると、この人の録音に食指が動くのだ。 過剰で...
[続きを読む](2019.07.04) -
モーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』はデスピーナ役の演じ方次第で印象が大きく変わる。デスピーナが狡知に長けた年増女やルサンチマンの化身のように感じられると、この劇は重苦しくなるが、無邪気でチャーミングな悪戯娘のようだと、オペラ・ブッファとしての体裁を保つことができる。 1930年代に活躍したソプラノ歌手、イレーネ・アイジンガーが演じたデスピーナは後者の...
[続きを読む](2018.11.10) -
ハイドン入門 1793年から1794年の頭にかけて作曲された「軍隊」は、「驚愕」と共に、数多あるハイドンの交響曲の入り口に控えている曲である。多くの人は、これらの作品からハイドンの音楽の森の中に足を踏み入れていく。ちなみに、「軍隊」という呼称はザロモン・コンサートでの初演時から使われているもので、第2楽章で打楽器(大太鼓、シンバル、トライアングル)が軍楽風に...
[続きを読む](2013.06.25) -
ウィーンのプリマドンナ セーナ・ユリナッチの歌声は、豊かで深みがあり、あたたかく、声域全体のトーンが安定している。そこには作品のエッセンスを聴き手の耳の奥、心の奥にまで確実に届ける恩寵のような力も備わっている。何度繰り返し聴いても飽きることのない声、安心してどっぷり浸ることが出来る声である。 1921年10月24日、ユリナッチは医師の娘としてトラヴニクに生ま...
[続きを読む](2013.02.23) -
恋人たちの学校 『コジ・ファン・トゥッテ』の作曲者には元々サリエリが予定されていた。しかし、サリエリが降りたため、モーツァルトに依頼が回ってきた。モーツァルトの書簡や妻コンスタンツェの証言によると、サリエリがモーツァルトに対して敵意と嫉妬を抱きはじめたのは、このオペラの初演(1790年1月26日)が成功を収めた時からだという。 ひと言でいえば不道徳なオペラで...
[続きを読む](2012.03.13) -
グラインドボーン音楽祭のメンバーを起用した1930年代のオペラ録音(『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』)の中では、『コジ・ファン・トゥッテ』が抜群に素晴らしい。これは『コジ』演奏史に残る屈指の名演である。カットの問題はあるが、『コジ』がここまで生き生きと演奏され、歌手たちのエネルギーが躍動している例はほとんどない。 このオペ...
[続きを読む](2011.09.09) -
フリッツ・ブッシュのキャリアの全盛期は戦前である。残された音源は当然モノラルで、キズもある。極端に古い音源は、現代のテクノロジーを駆使しても大した改善は望めない。下手に加工しても音が不自然にツルツルしてしまい、興ざめするだけだ。だから結局古いままで聴くほかない。にもかかわらず、演奏があまりに魅力的なために、聴いているうちに音質のハンデを忘れてしまう。193...
[続きを読む](2011.09.08)