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  • 型にとらわれず、自由に ブラームスの交響曲第3番は1883年に作曲され、同年12月2日に初演された。作曲当時、ブラームスは50歳。5月頃からヴィースバーデンで本腰を入れて筆を進め、10月にほぼ完成させた。ブラームスにしては速筆である。ちょうど作曲期間中、若い歌手ヘルミーネ・シュピースに恋慕の情を抱いていたらしく、その気分が作品に反映されていると見る向きもある...

    [続きを読む](2024.10.05)
  • 抑えられない創作意欲 ショスタコーヴィチの交響曲第6番は1939年に作曲され、1939年11月5日にエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮のレニングラード・フィルにより初演が行われた。大成功を収めた前作の第5番に比べると芳しい評価は得られなかったが、ショスタコーヴィチらしい革新性と諧謔性が十全に発揮された傑作である。 作曲者自身の言葉によると、第6番は「春や喜びや...

    [続きを読む](2024.07.08)
  • 凄絶なるもの ベートーヴェンの序曲『コリオラン』は1807年初めに作曲され、早くも同年3月、作曲者自身の指揮により初演された。タイトルの通り、ハインリヒ・ヨーゼフ・コリンの戯曲『コリオラン』のために書かれた音楽である。一説によると、ベートーヴェンはこの劇が何の音楽もなく上演されているのを見て、序曲を書こうと思い立ったらしい。出版年は1808年。作品はコリンに...

    [続きを読む](2024.05.18)
  • 限りないロマンと情熱 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は1806年に作曲され、同年12月23日に初演された。独奏を務めたのは、当時26歳のヴァイオリニスト、フランツ・クレメントである。作曲の際、ベートーヴェンはクレメントに助言を仰ぐこともあったという。当時のヴァイオリン協奏曲としてはスケールが大きく、演奏時間は40分から45分、第1楽章だけでも20分を超え...

    [続きを読む](2024.04.07)
  • 特別な雰囲気 クララ・ハスキルはルーマニア出身のピアニストで、モーツァルト弾きとして定評があった。幼少期から才能を発揮していたが、病気等に悩まされて思うようにキャリアを積めず、実際に大きな注目を浴びたのは戦後、50歳を過ぎてからのことだった。 ハスキルのピアノの特徴を一言で表現するのは難しい。あっと言わせるような解釈があるわけでも、絢爛たる技巧があるわけでも...

    [続きを読む](2024.02.06)
  • 「嘆きの歌」から輝かしい結末へ ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番は、1821年から1822年にかけて作曲された。自筆譜に記された完成日は、1821年12月25日。そこから修正作業を行い、1822年初春まで第3楽章に手を入れていたようである。献呈相手としては、パトロンだったフランツ・ブレンターノの夫人アントーニエか、弟子のフェルディナント・リースが予定さ...

    [続きを読む](2023.11.05)
  • エラール・ピアノが可能にした表現 ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」は1803年から1804年にかけて作曲された。この時期、ベートーヴェンの創造意欲はとどまるところを知らず、ピアノ協奏曲第3番、クロイツェル・ソナタ、交響曲第3番「英雄」、三重協奏曲など、傑作を次々と生み出していた。どの作品にも情熱と革新性がみなぎっていて、強い個性を放っている。音楽そ...

    [続きを読む](2023.09.05)
  • 装飾を削ぎ落とした短調の協奏曲 モーツァルトのピアノ協奏曲第24番は1786年3月24日に書き上げられ、同年4月7日にウィーンでの予約演奏会で初演された。調性はハ短調。この時期はピアノ協奏曲の収穫期で、1784年から1786年までの3年間で12作品(第14番から第25番まで)が書かれている。 第1楽章のカデンツァ、第2楽章、第3楽章のためのアインガングは作曲...

    [続きを読む](2023.06.09)
  • 作品の解釈 アンセルメは原典主義者ではなく、必要に応じて総譜を修正・変更していた。作曲家は幅広い解釈の余地を解釈者に委ねるものだ、というのが彼の持論だった。指揮者は作曲家の奴隷ではない。適切な解釈を行い、指揮者自身の意見を伝えなければならないとも主張していた。これは若い頃、ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキーといった人たちと意見交換を行い、自分の提案を...

    [続きを読む](2023.04.14)
  • 練習魔 天才のなかには練習嫌いが少なからずいるが、ルドルフ・ゼルキンは練習魔で、毎日何時間もピアノに向かっていた。まず非常に遅いテンポでスケール練習を行い、時間をかけて徐々にテンポを速め、最終的に最速で弾くのがお決まりだった。何度も演奏したことがある曲でも、手を抜かずに練習をくり返した。それはもはや練習というより、音楽に奉仕する儀式だったのかもしれない。グレ...

    [続きを読む](2023.02.04)
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