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  • エラール・ピアノが可能にした表現 ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」は1803年から1804年にかけて作曲された。この時期、ベートーヴェンの創造意欲はとどまるところを知らず、ピアノ協奏曲第3番、クロイツェル・ソナタ、交響曲第3番「英雄」、三重協奏曲など、傑作を次々と生み出していた。どの作品にも情熱と革新性がみなぎっていて、強い個性を放っている。音楽そ...

    [続きを読む](2023.09.05)
  • 簡潔で繊細な音の詩集 ショパンは1838年11月にジョルジュ・サンドと共にマヨルカ島へ行き、3ヶ月ほど過ごした。悪化した体調を回復させることが主な滞在目的だったが、ショパンは環境に馴染めず、精神的なストレスも重なり、病状は良くならなかった。しかし、その間も作曲を行い、1839年1月に完成させたのが「24の前奏曲」である。 作曲にあたり、ショパンが参考にしたの...

    [続きを読む](2023.03.04)
  • 美しい調和の音楽 モーツァルトのピアノ協奏曲第23番は美しい調和の音楽である。耳を傾けていると、世界の調和、感情の調和のなかにいるような心地を覚える。アンドレ・ジイドが日記に書いた「モーツァルトのよろこびは清らかに澄み渡っている。音楽のフレーズは、物静かな想いのようだ。その単純さは純粋さにほかならない」という言葉がそのまま当てはまる作品だ。明るいけど陽気すぎ...

    [続きを読む](2021.05.01)
  • 第3部 曲とスピーカーとの相性〜PMCのTB2+とtwenty5 22〜 次に、イギリスのメーカーPMCのTB2+である。特徴は、いわゆるモニター性能を最優先し、細密画のような描写力が画期的で素晴らしい。時間軸において恐ろしいほど正確で、音の立ち上がりが速く、「ザサッ ザサッ」と、音が切り込んでくるように感じられ、また、音源に色付けしないストレートな印象。...

    [続きを読む](2020.05.24)
  • ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 100選 その4コル・デ・フロートウィレム・ファン・オッテルロー指揮ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団1953年録音ピアノの音には重みがあるが、デュナーミクやアゴーギクに変な癖がなく、語り口は比較的なめらか。技巧も冴えている。両端楽章のヴァイオリンはきびきびしていて清洌だが、低弦の重みもしっかりと伝わってくる。オッテ...

    [続きを読む](2017.12.20)
  •  アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリは、同じ作品を徹底的に繰り返し練習し、表現の細かい部分まで磨き上げ、精巧無比な技術と強靭な理性をもって感情の抑揚を統御し、コンサートや録音に臨んでいた。1971年にドイツ・グラモフォンと契約してからの一連の録音は、まさにそんなミケランジェリの美学の結晶といえる。そこには一回性の感情表現はなく、完璧なアーティキュレー...

    [続きを読む](2013.10.04)
  • 「プレチピタート」が描くもの セルゲイ・プロコフィエフは1939年から1944年の間にピアノ・ソナタを3作書き上げた。第6番イ長調、第7番変ロ長調、第8番変ロ長調である。戦争に触発されて書かれたそれらの作品は、まとめて「戦争ソナタ」と呼ばれている。このシリーズ中、プロコフィエフの才気が爆発しているのが第7番である。よりどころのない不安、甘さのないリリシズム、...

    [続きを読む](2012.01.19)
  •  カール・ベームの指揮法の秘密に迫り、独自の個性をいい当てるような表現を探し、「こういうタイプの指揮者だ」と定義することは難しい。あえてそれを行おうとしても、最終的には自ずから平凡な、ほかの巨匠たちにもあてはまる次のフレーズに頼らざるを得なくなる。すなわち、「カール・ベームは本当に素晴らしい指揮者であり、真の音楽家であった」。 1894年8月28日、カール・...

    [続きを読む](2011.03.29)
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