タグ「モンゴメリー・クリフト」が付けられているもの

  • ドキュメンタリー的手法 挑戦的なテーマで数々の名作を手掛けたオーストリア出身の名監督フレッド・ジンネマンは、若い頃ロバート・フラハティの助手を務めていたことがあり、その経験を生涯の糧としていた。自伝にも「フラハティのドキュメンタリー・アプローチは、『山河遥かなり』、『男たち』、『真昼の決闘』、『尼僧物語』、『ジュリア』や他の映画を監督していた時に、私の脳裏に...

    [続きを読む](2021.04.14)
  •  『地上より永遠に』(1953年)に印象的な場面がある。ホノルルの兵営に配属されたプルーイット二等兵が、かつてボクシングで親友に大きな怪我を負わせたことをクラブのホステスに話すシーンだ。その語り方は、内に抱える苦しみをにじませていて、いわゆるお芝居らしいテンポがない。このように内向的で生々しい演技は当時のハリウッドではまだ珍しく、多くの名優が出演しているこの...

    [続きを読む](2019.10.07)
  • 『五本の指』 『五本の指』(1952年)は第二次世界大戦を背景にしたスパイ映画。中立国トルコの英国大使館で有能な執事として働くディエロ(ジェームズ・メイスン)には裏の顔があった。連合国側の機密情報を高値でドイツ側に売るスパイである。ディエロは以前仕えていた伯爵の未亡人アンナ(ダニエル・ダリュー)の協力を得て、素性を隠し、巧みにナチスと交渉するのだが........

    [続きを読む](2018.11.02)
  • はじめに トニー・リチャードソン監督の『トム・ジョーンズの華麗な冒険』(1963年)でヒロインのソフィが、大好きなトムではなく、全く相手にしていないブリフィルとの結婚をすすめられる場面がある。当然、ソフィは嫌悪感を示すのだが、その時の表情が本当に豊かで、可愛らしい顔を思いきり崩し、眉間に皺を寄せ、大きな目と口を忙しく動かして、絶対的な拒絶を表現する。彼女はト...

    [続きを読む](2017.08.10)
  •  ドストエフスキーの『死の家の記録』によると、一人の人間を潰して破滅させる最も恐ろしい罰は、一から十まで全く無益で無意味な作業をさせることらしい。意味と目的と達成から切り離されたその罰は、「たとえば一つの桶から別の桶に水を移し、その桶からまたもとの桶に移すとか、ひたすら砂を槌で叩くとか、一つの場所から別の場所に土の山を移して、また元に戻すといった作業」のこと...

    [続きを読む](2017.04.08)
  •  1940年代のイギリス映画界で、ジェームズ・メイスンは絶対的なカリスマであった。屈折した性格の役が似合い、陰のある悪役を演じても、エキセントリックな変質者を演じても、正義の看板を背負った登場人物たちより魅力を発散して、観る者に肩入れさせる。なめらかで艶のある声、ニヒルな笑み、ノーブルな物腰を武器に、主導権をとってしまうのだ。危険と言えば危険な魅力である。 ...

    [続きを読む](2015.05.09)
  •  ジェラール・フィリップはいつの時代にも通用しそうな美貌に恵まれた二枚目であるだけでなく、舞台でも高い評価を得ていた演劇人であり、抜群の身体表現の能力と知性と品格と神秘性を備えたカリスマであった。そして何より柔軟性に富み、アクション史劇にも、ロマンティックな文芸映画にも、軽い喜劇にも、シリアスな現代ドラマにも嵌る名優であった。だからこそ、亡くなってから半世紀...

    [続きを読む](2013.11.04)
  •  しかし、私がこの映画を観直して一番感銘を受けたのは(初めて観た時はアラン・ラッドの早撃ちだったが)、悪役のジャック・パランスである。彼が演じたのは殺し屋ウィルソン。このウィルソンが、エライシャ・クック・ジュニア扮する短気な開拓農民トーリーを撃つ場面は、鳥肌が立つ。 わざと喧嘩を売るウィルソン。カッとするトーリー。ウィルソンは不敵な笑みを浮かべ、「抜け」とい...

    [続きを読む](2012.04.12)
  • 寡作の大監督 ジョージ・スティーヴンス監督は、そのキャリアの長さのわりに作品数が少ない。これは彼が完璧主義で、ひとつの作品に時間と予算をかけすぎていたためといわれている。ただ、そうして生まれた作品のいくつかは、映画史上でも、出演者のキャリアの上でも、大きな節目となった傑作として映画ファンに愛されている。 たとえば1942年の『女性No.1』。これはハリウッド...

    [続きを読む](2012.04.11)
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