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  • 自由であり、孤独である シューベルトは31年の短い生涯の間に多くの曲を書いた。断片や消失したものも含めると、その数は1000曲以上に及ぶ。晩年は創作意欲が衰えるどころかますます盛んになり、傑作を次々と生み出した。 晩年のシューベルトをつき動かしたものが何かはわからないが、ベートーヴェンの死(1827年3月)は一つの契機となったかもしれない。かつて、「ベートー...

    [続きを読む](2024.08.05)
  • エラール・ピアノが可能にした表現 ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」は1803年から1804年にかけて作曲された。この時期、ベートーヴェンの創造意欲はとどまるところを知らず、ピアノ協奏曲第3番、クロイツェル・ソナタ、交響曲第3番「英雄」、三重協奏曲など、傑作を次々と生み出していた。どの作品にも情熱と革新性がみなぎっていて、強い個性を放っている。音楽そ...

    [続きを読む](2023.09.05)
  • 装飾を削ぎ落とした短調の協奏曲 モーツァルトのピアノ協奏曲第24番は1786年3月24日に書き上げられ、同年4月7日にウィーンでの予約演奏会で初演された。調性はハ短調。この時期はピアノ協奏曲の収穫期で、1784年から1786年までの3年間で12作品(第14番から第25番まで)が書かれている。 第1楽章のカデンツァ、第2楽章、第3楽章のためのアインガングは作曲...

    [続きを読む](2023.06.09)
  • フランス語で「Pathétique」 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」は、1797年から1798年の間に作曲され、1799年に出版された。作曲者がまだ20代の頃の作品である。標題は原語で「Grande Sonate pathétique」、つまり正確には「大ソナタ悲愴」となる。ベートーヴェンのピアノ・ソナタには「月光」、「テンペスト」、「ワルトシ...

    [続きを読む](2022.03.05)
  • 遺書の後に ベートーヴェンが完成させたピアノ協奏曲は全部で5つあるが、短調を主調としているのは第3番のみである。 作品の構想が練られたのは1797年頃。1800年頃にほぼ作曲し終え、そこから手を加えて1803年に完成させたという。しかし一方で、1803年4月5日の初演を迎えるまで、ピアノ部分のスコアはほとんど書かれておらず、ベートーヴェンが即興で演奏したとい...

    [続きを読む](2019.09.03)
  • ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 100選 その2ミンドゥル・カッツサー・ジョン・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団1959年録音カッツはルーマニアのピアニスト。正統派のピアニズムで、奇をてらうことはない。第1楽章のピアノの演奏は毅然としていて、勢いもある。分散和音の表現にも清冽さが感じられる。が、オーケストラの響きは(私が聴いたレコードの音質が貧弱なせ...

    [続きを読む](2017.12.16)
  • 「皇帝」と呼ばれる協奏曲 ベートーヴェンが完成させた最後の協奏曲である。作曲年は1809年。いわゆる「傑作の森」の時期に書かれた大作で、「皇帝」の異名にふさわしいスケールと風格を備えているが、これは作曲家自身による命名ではなく、出版人のJ.B.クラマーによるものである。作品はルドルフ大公に献呈された。 1809年といえば、ウィーンがフランス軍に占領されていた...

    [続きを読む](2017.12.05)
  • 夢幻と躁状態 シューマンのピアノ協奏曲イ短調は、この天才が生み出した、革新的で閃きに満ちた傑作である。彼は若い頃からピアノ協奏曲のジャンルに手を染めていたが、完成させたのはこれ1作のみ。完成時、シューマンは35歳になっていた。2作目、3作目を書くことが出来なかったのは、この時期(1845年)から精神のバランスを崩すようになったこと、また、管弦楽の扱いが未熟だ...

    [続きを読む](2012.05.30)
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