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型にとらわれず、自由に ブラームスの交響曲第3番は1883年に作曲され、同年12月2日に初演された。作曲当時、ブラームスは50歳。5月頃からヴィースバーデンで本腰を入れて筆を進め、10月にほぼ完成させた。ブラームスにしては速筆である。ちょうど作曲期間中、若い歌手ヘルミーネ・シュピースに恋慕の情を抱いていたらしく、その気分が作品に反映されていると見る向きもある...
[続きを読む](2024.10.05) -
凄絶なるもの ベートーヴェンの序曲『コリオラン』は1807年初めに作曲され、早くも同年3月、作曲者自身の指揮により初演された。タイトルの通り、ハインリヒ・ヨーゼフ・コリンの戯曲『コリオラン』のために書かれた音楽である。一説によると、ベートーヴェンはこの劇が何の音楽もなく上演されているのを見て、序曲を書こうと思い立ったらしい。出版年は1808年。作品はコリンに...
[続きを読む](2024.05.18) -
情熱に満ちた交響的幻想曲 シューマンの交響曲第4番は1841年に作曲され、同年9月13日、妻クララの誕生日に贈られた。初演は同年12月6日、ライプツィヒのゲヴァントハウスで行われたが、期待していたような評価を得られず、楽譜の出版も見送られた。その後、1851年に改訂を開始。1853年12月30日に改訂稿の初演がデュッセルドルフで行われ、成功を収めた。 異名は...
[続きを読む](2023.10.04) -
美しいメロディーがより美しくなる おなじみの作品が新鮮な魅力を放ったり、なじみのない作品が親しげに響いたとき、決して誇張ではなく、芸術の深い部分と調和したような気持ちになる。ペーター・マークはそういう感動を与える指揮者である。新鮮な魅力を放つといっても、それが単に奇を衒ったものなら二度聴けば飽きる。マークの指揮はそうではなく、独特の表現が全て音楽的に響くのだ...
[続きを読む](2022.06.04) -
「聖アントニウスのコラール」から始まる物語 ブラームスの『ハイドンの主題による変奏曲』は、1873年に作曲され、同年11月、作曲者自身の指揮により初演された。交響曲第1番を完成させる3年前のことである。 1870年、ウィーン学友協会の司書でハイドン研究家のカール・フェルディナンド・ポールから、ハイドン作とされる「ディヴェルティメント 変ロ長調 Hob.II....
[続きを読む](2021.10.03) -
世界で最も有名な小夜曲 モーツァルトの音楽の中でも特に有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、1787年に作曲された。完成したのは同年8月10日。つまり、キャリアの後期に書かれた作品である。 この名称は、モーツァルト自身が自作目録に記載したもので、日本語に訳すと「小夜曲」となる。もともとは5つの楽章で構成されていたようだが、何らかの理由でメヌエットの一...
[続きを読む](2020.11.10) -
第2楽章の16小節 100作以上あるハイドンの交響曲の中でも一、二を争うくらい有名な第94番は、1791年にロンドンで作曲された。初演は、1792年3月23日に行われている。「驚愕」という副題は初演後すぐに付けられて広まったという。 この副題は、第2楽章の16小節目で突然鳴らされるフォルテッシモの強音に由来している。それまで静かに弦楽器が主題を奏でていたとこ...
[続きを読む](2020.10.10) -
フェードルの場合 ラシーヌの悲劇『フェードル』で、フェードルはある言葉に対して恐れに近い反応を見せる。それは人の名前、愛してはいけないのに愛してしまった義理の息子イポリートの名前である。 フェードルはギリシャ神話に出てくるクレタ島の王ミノスの娘であり、アテナイの王テーゼの妻である。テーゼにはアマゾン(女性だけの部族)の女王アンティオペーとの間に子供がいる。そ...
[続きを読む](2020.08.12) -
自分の好きな作品を紹介し、おすすめの演奏を挙げる時、ルドルフ・ケンペの名前を出していることが少なくない。若い頃は極度の激しさ、奈落の底の暗さ、えぐるような鋭さを求めがちで、過剰な表現に走らないケンペに惹かれることは稀だったが、心身を満たす充実感を味わいたいという気持ちが強くなっている今、何度も聴きたくなる演奏となると、この人の録音に食指が動くのだ。 過剰で...
[続きを読む](2019.07.04) -
スイス出身の大ピアニスト、エドウィン・フィッシャーの著書に『音楽の考察』というエッセイ集がある。邦訳もあり、『音楽を愛する友へ』と題されて新潮社から出ていた(1958年初版)。 フィッシャーはこの本の中で、演奏家の心得を述べ、「作曲家が作品を懐胎した時に彼が霊感を受けていた状態に、われわれ自身の身を置くこと」の大切さを説き、合理主義に傾いている音楽表現や音...
[続きを読む](2019.01.26)