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  •  幼い頃、田舎の実家に行き、薄暗い廊下から2階へと続く狭い階段を見上げたとき、何か不思議なものを見るような感覚に襲われた。それはコンクリートのマンションに住んでいた私にとって、日本家屋の2階というものを意識した初めての体験だった。私は何とも言いようのない違和感を抱き、階段から目を背けた。その違和感は8歳くらいから好奇心に変わったが、それまで2階というのはちょ...

    [続きを読む](2021.01.27)
  •  戦前にデビューした女流探偵作家の代表的存在でありながら、忘れられたマイナー作家のような扱いを受けていた大倉燁子。その名前が、2011年に『大倉燁子探偵小説選』(論創社)が出版されたことにより、再び一部の人々の口の端に上るようになった。代表作を全て収録しているわけではないが、江戸川乱歩が評価したデビュー作「妖影」や森下雨村を唸らせた「消えた霊媒女(ミヂアム)...

    [続きを読む](2012.11.17)
  •  場当たり的な政策、米価の高騰、米騒動、度重なる不況、コレラの蔓延、都市部への人口の流入、木造建築密集地帯で多発する火災......と悪化の一途をたどっていた貧民問題は、世論においても多少の関心を集めていた。特に明治10年以降は、数多くの社会主義思想関連の書籍が翻訳出版され、単に「自己責任」としてとらえられていた貧民観も、社会問題的側面から論じられるようにな...

    [続きを読む](2011.07.02)
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