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  • 視点の正確さ 新しい一つの人生、すなわち、結婚後の生活を描く小津監督の視点は、正確さを志向している。そこには結婚や家族を美化する描写はない。むしろ、分かり合えない者たちが同居している雰囲気すら漂っている。それがいろいろなことを経て、時間をかけながら、「本当の夫婦」ないし「本当の家族」になっていく。『お茶漬の味』(1952年)や『早春』などは、そのプロセスを強...

    [続きを読む](2015.01.25)
  • 実験と娯楽 「なにを始めるかわからないと評判の市川崑」ーー1957年に公開された『穴』の予告編に出てくるキャッチコピーである。これほど市川崑という監督のスタンスをわかりやすく言い表した言葉はない。ベネチア国際映画祭サン・ジョルジオ賞を受賞し、アカデミー外国語映画賞候補にも挙がり、市川崑の名を知らしめた『ビルマの竪琴』。女子大生に睡眠薬を飲ませて犯す場面が話題...

    [続きを読む](2012.10.18)
  •  有馬稲子の美貌は宝塚時代から有名だった。ただ、その美しさには翳があり、笑顔の中にも愁いが漂っていて、それが単なる美人女優にはない複雑な魅力を彼女に付与している。東宝専属女優としての第1回主演作『ひまわり娘』を手がけた千葉泰樹監督も、有馬稲子の印象をこう語っていたという。「明るい感じの娘だと思っていたが、撮影が始まり、彼女を見つめていると、むしろ哀愁が濃いこ...

    [続きを読む](2011.07.23)
  •  昭和20年5月24日、東京大空襲の夜に出会った男と女。2人は名を告げることなく、数寄屋橋の上で半年後に会うことを約束する。それが長く険しい悲恋の道の始まりとも知らずに......。 やがて戦争が終わり、約束の11月24日を迎えた。橋の上では男が女を待っている。同じ頃、女は佐渡で不本意な結婚を迫られていた。ようやく2人が会えたのは、さらに1年が経ってからのこ...

    [続きを読む](2011.07.01)
  • 2人の女優 『女は二度生まれる』は若尾文子主演作。無欲でお人よしの芸者、小えんが様々な男たちと関係を結ぶことで少しずつ女として変化してゆくプロセスを描く。諸行無常の人間模様をこまやかに映し出す川島雄三の演出がすばらしい。若尾の魅力も十二分に引き出されており、難役にぴったりとはまっている。 撮影現場での川島について、若尾は川本三郎との対談でこう語っている。「ダ...

    [続きを読む](2011.06.26)
  •  集中して観ることができる大作映画というのは、なかなか無いものである。大抵の場合、中だるみして、終わった後に必ず欠伸をしながらこう思う、「これが120分以内にまとまっていたらなあ」。 つまらない映画を延々と見せられるのは苦痛、はっきり言って拷問である。その苦しみを快楽に転換させることができるのは、出演者か監督の熱狂的なファンか、よほどのマゾである。上映時間が...

    [続きを読む](2011.02.07)
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