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「河内屋」 広津柳浪は善悪を明確に分けず、勧善懲悪を期待させない。「河内屋」にはその特徴がよく出ている。「河重」の異名を持つ重吉とお染は愛のない結婚をした夫婦である。お染は、かつて重吉の弟の清二郎と惚れ合っていた。その3人が同じ屋根の下に住んでいる。そこへ重吉の愛人お弓が住み着くようになる。お染と、お染を純粋に想い続ける清二郎は哀れな被害者だ。誰もがそう思う...
[続きを読む](2021.09.15) -
「今戸心中」 広津柳浪は「悲惨小説」の代表的な作家である。「悲惨小説」は「深刻小説」とも呼ばれ、日本の文壇で自然主義が猛威を振るう以前の明治20年代末から30年代前半にかけて流行した。内容は文字通り重たく、救いのない結末のものが多い。登場するのも、先が見えない生活をしている遊女、病人、醜夫、醜女、知的障害者といった具合である。 ただ、柳浪の小説はいたずらに重...
[続きを読む](2021.09.11)
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