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「続悪魔」は、神経衰弱が悪化しているところから始まる。「癲癇、頓死、發狂などに對する恐怖が、始終胸に蟠つて、其れでも足らずに、いやが上にも我れから心配の種を撒き散らし、愚にもつかない事にばかり驚き戦きつつ生をつづけて居」る佐伯は、反面、「高橋お傳」「佐竹騒動妲妃のお百」といった毒婦物の講釈本を読み、恐怖に敏感な神経を麻痺させるような血なまぐさい幻想を堪能し...
[続きを読む](2016.06.11) -
谷崎潤一郎の初期作品「悪魔」と「続悪魔」は、強迫観念に支配された人間の心理を真正面から扱った作品である。前者は明治45年2月の『中央公論』(原題は旧字で「惡魔」)、後者は大正2年1月の『中央公論』(原題は旧字で「惡魔(續篇)」)に掲載された。「The Affair of Two Watches」(『新思潮』明治43年10月)にも「激しいHypochondr...
[続きを読む](2016.06.04) -
お正月、久しぶりに帰省した際、5年前にできたというショッピングモールに行ってみた。と、そこにある本屋で文庫本が不自然なほど大量に平積みされていた。表紙を見ると、『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』とある。原題は『PEOPLE OF THE LIE』、著者はモーガン・スコット・ペック。人間の心の内側にある邪悪性を扱った書である。 懐かしいと思う人も...
[続きを読む](2013.01.19) -
21世紀の今もドクトル・マブゼは生きている。 先日、文庫化された平野啓一郎の長編『決壊』を読んだが、この前半に〈悪魔〉と称する男がカラオケボックスで中学生の北崎友哉を唆す重要な場面がある。そこで放たれる言葉は、バウム教授に託されたマブゼのメッセージを思い出させる。 〈悪魔〉は、「純化された殺意として、まったく無私の、匿名の観念として殺人を行う」ことを奨励し...
[続きを読む](2011.07.16)