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  • トリックで魅せる作品 作者の高木彬光は、『呪縛の家』や『魔弾の射手』などで〈読者への挑戦〉を行っている。1948年に坂口安吾が『不連続殺人事件』で話題をさらった時のように、小説が結末を迎える前に事件の謎を解いた読者に、賞金を出す企画である。『呪縛の家』は連載中に酷評されたこともあり、作者もいきり立ったのだろう、「ここで、最後のヒントを与えましょう。ここまで書...

    [続きを読む](2019.08.04)
  • 天才探偵の登場 高木彬光のデビュー作『刺青殺人事件』で神津恭介が登場するタイミングは完璧だった。密室で他殺死体が見つかり、その後も残虐な殺人が続き、謎が謎を呼び、警察もお手上げ状態となり、ページ数も残すところ4分の1になろうかという時、この美貌の天才探偵が突然登場し、あっけなく密室の謎を解き、真犯人の正体を暴いたのだ。これ以上おいしい登場の仕方はない。謎解き...

    [続きを読む](2019.07.27)
  • 素人探偵、仁木兄妹の登場 仁木悦子の推理小説には、謎解きの面白さや緊迫感だけでなく、微笑ましい明るさ、軽快さがある。おどろおどろしさで背筋をぞくぞくさせる作風とは一線を画し、端正な文体で物語をテンポよく進行させ、しこりを残さず、あたたかい余韻で読者を包み込む。「探偵役」を務める人物たちも、犯罪者を捕らえてやるという正義感より、隠された謎を知りたいという好奇心...

    [続きを読む](2014.07.19)
  •  蒼井雄は昭和10年代に話題になった推理作家である。本名は藤田優三。1909年に生まれ、1975年に亡くなった。作家として独り立ちすることなく、関西配電の技師としてサラリーマン人生を送り、数えるほどしか作品を残さなかった。代表作は『船富家の惨劇』。1936年、これが春秋社の書き下ろし長編募集に一席で入選し、注目を集めた。蒼井を推した審査員は江戸川乱歩である。...

    [続きを読む](2011.10.22)
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