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『木石』と『新雪』 1940年代の作品には、舟橋聖一原作の『木石』(1940年)、藤澤恒夫原作の『新雪』(1942年)などがある。『木石』は伝染病の研究所が舞台で、いつもの庶民派映画という感じはしない。ただ、『木石』で赤木蘭子扮する厳格な女性は、「悪意のない身勝手な男により、苦しい思いをする女」という五所作品らしい女性像に当てはまる。 その後、五所は大映に移...
[続きを読む](2020.09.18) -
意味のある動作 先にも述べたように、編集は極めて巧妙だ。中には、おとみがラーメンに胡椒をかけて大きなくしゃみをし、幸子がずるずる音を立ててラーメンを食べるカット→おきん宅の外観のカット→おとみの前でおきんが上品にご飯を食べるカットという風に繋げるなど、やりすぎのように見える箇所もあるが、綿密に計算された編集美学に貫かれていることは間違いない。 人物の動作にも...
[続きを読む](2017.03.20) -
中北千枝子は成瀬巳喜男監督の映画に欠かせない名脇役である。演じるのは、大体家庭に問題を抱えている奥さんや出戻りの役で、本人も「なんかシケた役が多いんですよね。まともな役ってないんですよね」と語っている。 例えば、『山の音』(1954年)で演じている役は、子供を連れて家出し、実家にやってきた女。彼女はいろいろ辛い目にあってきたことで性格がささくれており、父親...
[続きを読む](2016.04.15) -
生まれることも、死ぬことも 1960年の『笛吹川』は戦国時代を舞台にした映画だが、話の中心人物は武将ではなく、農民である。戦が当たり前のように繰り返されている日常。功名心にはやる農民は、家を捨てて戦場へ向かい、武勲を立て、束の間慢心するが、良い時は続かず、まもなく戦死する。時が経てば、今度は次世代の若者が戦場へ行き、同じように武勲を立て、そして殺される。さら...
[続きを読む](2012.08.03) -
『二十四の瞳』の涙 社会生活を送っていく中で、意思と行動を一致させるのは容易なことではない。いいたいと思ってもいえない、怒りをぶつけたいと思ってもぶつけられない、復讐したいと思っても復讐できない、逃げたいと思っても逃げられない、という人が大半である。欧米では合理性を以て筋を通せることも、日本で同じようにできるとは限らない。木下惠介監督は、そういう日本人の環境...
[続きを読む](2012.08.01)