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永田雅一と共に 森一生は長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎の主演作を数多く撮った大映の職人監督である。その歩みは常に名物プロデューサー永田雅一と共にあり、まず日活太秦撮影所に入り、その後、第一映画社、新興キネマを経て、大映で活躍した。毎回、永田ラッパ(渾名)は特に説明もなく、「おい、これや。これを何日までにやれ」と言って脚本を森に渡し、後は任せていたという。そう...
[続きを読む](2021.11.17) -
吉村公三郎監督によると、初めて品川駅で「美しい少女」を見かけた時、「あんな娘が女優だったらなあ」と仕事仲間と語り合っていたという。その後、彼女が松竹大船撮影所でダンスを教えている先生だと知ると、吉村監督とスタッフたちは稽古場に押しかけ、映画に出演するよう口説いた。とはいえ、相手は素人である。演技指導のやり方は、「少し上を向いて、目線は数センチ下にして」と...
[続きを読む](2020.11.01) -
美しさと力強さと情緒 日本映画の斜陽期と言われた厳しい時代に、時代劇の伝統を守りながら独自の演出スタイルを貫き、数々の傑作を世に送り出したのが加藤泰である。東映の監督なので、大衆向きの映画を多く手掛けているが、安易に作られた駄作はない。どんな題材であっても妥協せず、美しさと力感と情緒に溢れた作品に仕上げるのが彼の信条だ。 代表作を5本挙げるなら、中村錦之助主...
[続きを読む](2020.05.15) -
特殊な時代劇の継承者 時代劇の殺陣に最も大きな革新をもたらしたのは、黒澤明監督の『七人の侍』(1954年)と内田吐夢監督の『血槍富士』(1955年)ではないだろうか。一方は雨の中で集団と集団が泥まみれになりながらぶつかり合い、もう一方は槍の構えもサマになっていない槍持ちが何度も突き損じたり転んだりしながら悪戦苦闘する。いずれも、斬られる心配のない剣豪が華麗な...
[続きを読む](2019.01.12) -
中北千枝子は成瀬巳喜男監督の映画に欠かせない名脇役である。演じるのは、大体家庭に問題を抱えている奥さんや出戻りの役で、本人も「なんかシケた役が多いんですよね。まともな役ってないんですよね」と語っている。 例えば、『山の音』(1954年)で演じている役は、子供を連れて家出し、実家にやってきた女。彼女はいろいろ辛い目にあってきたことで性格がささくれており、父親...
[続きを読む](2016.04.15) -
組織を描いた作品として 黒澤明監督の『七人の侍』(1954年)は、「日本映画史上最高の傑作は何か」という問いに対する答えのひとつとして定着している。極端に高い評価が世代を超えて広範囲に存在するのは、作品自体が偉大であるからにほかならない。しかし、その根拠を挙げる際、撮影現場の苦労話や海外の映画への影響力を力説しても、作品とはまた別の権威性しか伝わらないだろう...
[続きを読む](2015.06.11) -
1952年に監督デビューして以来、会社から言われるままひたすら娯楽映画を撮り続けていた野村芳太郎が、初めてその尖った個性を見せたのは1958年の『張込み』からである。原作は松本清張。映画の大部分を占めるのは2人の刑事が犯人の元恋人宅を見張っているシーン。それが終盤、急展開をみせ、クライマックスへと驀進する。その演出の巧みさといったら、黒澤明の『天国と地獄』...
[続きを読む](2011.03.17)